【report】ゼロからの起業 第7期 DemoDay|4ヶ月前は「起業したい」しかなかった10人が、自分の根っこから事業を語った日 (2026.9.4)
9/4(金) 沖縄市 コザで開催した『STARTUP BOOT CAMP ゼロからの起業 第7期 DemoDay(最終創業プレゼンテーション)』の様子を紹介します!
STARTUP BOOT CAMP「ゼロからの起業」は、”起業したい”という気持ちだけを持った十数人が集まり、4ヶ月かけて創業の動機を掘り下げ、事業プランをつくり上げていく創業プログラム。今年で第7期を迎え、沖縄・北海道・つくば(茨城)・静岡の4拠点をつないだ全国合同開催として、しびっくぱわーは茨城・つくば拠点の事務局を担っています(今年で3年目)。
DemoDay当日は、残暑と台風の気配のなか、コザスタートアップ商店街のLagoon KOZAに会場参加とオンライン参加が集まり、10名の受講生が「人生をかけて創業する理由」を5分に込めてプレゼンしました。
4ヶ月で、動機から事業プランへ
冒頭、講師の麻生要一さん(起業家・投資家・経営者・創作家)から、この4ヶ月の道のりが紹介されました。
Day1で「起業とは何か、起業家としてどんな人生があり得るのか」を知り、Day2では起業家にとって最も重要な創業の動機を深く掘り下げる。Day3で動機を事業の形に設計し、Day4で最初のお客様のつかまえ方を学ぶ。AI時代ならではの高速な事業立ち上げも実践し、先輩起業家の話と振り返りを挟んで後半戦へ。Day6で「全人格で理財の計画を立てる」ファイナンス、Day7でプレゼンテーション。そして練習を経て、今日Day8を迎えました。全8日程に今年は2日程が追加され、10日程のプログラムになっています。
そして、第1期からずっと語り継がれてきた4つのグラウンドルール。
1. 劇的進捗を見せる — 2週間ごとに、必ず2週間前とは違う状況にし続ける
2. 自分を偽らない — 違和感があれば、戻る
3. 大切な人の話を、大切に聞く
4. コミュニティに貢献する
「起業家人生を歩むうえで、絶対に守ってほしい。長い起業家人生で最も成果を高めるオペレーティングシステムです」。受講生の皆さんは、2週間ごとに”劇的進捗”を問われ続けて、この日にたどり着きました。
今日のプレゼンは順位を決めるものではなく、全員が違う事業アイデアでこれから創業していく仲間。ただしイベントとして、KSA賞(コザスタートアップ商店街賞)/コザ信用金庫賞/みらいスタジオ賞/麻生賞の4つのアワードが用意されました。
ゲストコメンテーターは、コザで挑戦を支える3名
🙋♂️ 豊里健一郎さん(フォーシーズ株式会社 代表取締役/コザスタートアップ商店街) コザの商店街を「挑戦する人が集まる街」として10年近く運営。ベンチャー支援やベンチャーキャピタルにも取り組む。
🙋♂️ 前屋誠さん(コザ信用金庫 専務理事(代表理事)) 本店は会場から歩いて5分。「コザで生まれてコザで育った信用金庫。誰よりもコザのことを愛しているので、こういうイベントには必ず駆けつけます」
🙋♂️ 兼城駿一郎さん(株式会社みらいスタジオ 代表取締役) 北海道から沖縄まで、地域の課題をビジネスで解決するスタートアップ支援を行いながら、自らも起業家として複数の会社を経営。
コメントは「良い/悪い」の評価ではなく、これから起業家人生を始める10人への応援メッセージとして。順番は厳正なるくじ引きで決まりました。
前半:5人の「人生をかけて創業する理由」
清水彩花さん|花で、受け取った愛情を未来に残す
航空自衛隊の広報官から人材紹介へ。成果を出すほど「本当に人の人生に寄り添えているのか」と葛藤した日々と、どんなときも自分を大切にしてくれた祖母の存在。「人は、大切にされてきた記憶を思い出せたとき、また前を向ける」。大切な人へ想いを届ける”生ける花”と、受け取った愛情を未来へ残す”残す花”。今年6月に始めたプリザーブドフラワー加工はすでに70点以上の依頼があり、次の一歩として、人生をヒアリングして一冊にまとめる「人生物語」と「花のお守り」を、終活を考える50〜70代とその家族へ届けます。
コメンテーターから:「思いをいつでも身につけていられる。日常のなかで思い出せる体験設計への挑戦、応援させてください」「『DIE WITH ZERO』を読むような、思い出にお金を使いたい層に届けにいくのがいいのでは」

豊田睦雄さん|北海道・北竜町のひまわり油を、ビジネスで残す
信用金庫、市役所、不動産ベンチャーの共同創業、そして北海道のスタートアップ支援と、15年間「地域の現場」を選び続けてきた豊田さん。人口約1,500人の北竜町には、23ヘクタール・東京ドーム5個分に広がる日本最大級のひまわり畑があり、ひと夏で20万人が訪れます。でも、この町の「ひまわり油」は今、消えかけている。委託先の工場が来年で撤退し、行政の再生事業だけでは続かない——「本来これは行政ではなくビジネスの仕事。やる人がいないなら、僕が人生をかけてやる」。理念は「小さくても強い光を放つ町を、いくつも残す」。高付加価値ブランドとして、ひまわり油を町に残す挑戦です。
コメンテーターから:「1,500円のものを4,000円で売るなら、ブランド価値をどう伝えるか」「20万人が来ている。油を高く売ることだけにこだわらず、ひまわり畑という資産で体験を設計し、地域に人の営みを残す観点も」

青木優美さん|子どもたちの「夢中のインフラ」をつくる
理学博士、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の広報を経て、これまで手がけた科学イベントは多数。学校で馴染めないことがあり「どこか自分らしくいられない」子ども時代を支えてくれたのが、ものづくりでした。物理の図をアクセサリーにしたら面白いのでは——そんな思いつきをプレゼンしたら仲間が集まり、人見知りでも”好き”を通じて人とつながれると実感。学校にも家庭にも居場所を見つけられない子どもたちに、体験からつながりまでを届ける「夢中のインフラ」をつくります。
コメンテーターから:「AI時代、好きを続けられる力こそ求められる」「セーフプレイスを地元だけで考えるとマッチングが難しい。オンラインや他地域とつなぐ設計も一緒に考えたい」

柏原大真さん|スポーツ×国際交流で、静岡を開かれた街に
静岡県武道館を中心にトレーニング指導を行い、サーフィンの国際大会で日本代表チームをサポートした経験も。転校のたびに「よそ者」として苦しんだ幼少期、そして最初の就職の失敗。そんな自分を救ってくれたのは、言葉が違っても夢中でボールを追いかければ友達ができる「スポーツ×国際交流」でした。静岡で肩身の狭い思いをしている留学生や外国人労働者に、スポーツを通じて地元企業や行政とつながる機会を届け、日本語学習や安心できる就職へとつなげます。
コメンテーターから:「コザは基地の街として外国人とともに育ってきた。”無理に混ぜない”で安心できる隙間をつくり、関係性を築いていくことが大事」「社団法人でコミュニティを、株式会社で人材のモデルを、両方持つ手もある」

亀田考明さん|「一人で生きることは怖くない」と言える社会へ
政治記者から2年前、特殊清掃の世界へ。現場でいちばん辛いのは作業ではなく、遺族に請求書を渡す瞬間だと言います。特殊清掃だけで10万円、原状回復まで含めれば100万円、200万円。「生きている間は誰にも迷惑をかけたくない人が、一人で亡くなったというだけで、最後に大きな負担を残してしまう」。発見までの時間はゼロにできないが、体液の浸透は技術で止められる——医療現場の技術を住宅に転用した防漏シートを開発し、公営住宅や単身高齢者向け住宅の大家さんへ届けます。ビジョンは「一人で生きることは怖くない、と言える社会」。
コメンテーターから:「”対孤独死”という言葉を前面に出さず、子どもやペットのいる家庭にも刺さるコンセプトへずらすと、売りやすくなるのでは」「誰が発注の意思決定者なのかで、ビジネスそのものが変わる」

後半:さらに5人。会場から、オンラインから
比屋根由季菜さん|10代のための実践トレーニング「NO RULES」
地域おこし協力隊を経て、学生や協力隊員へ500回以上の面談を重ねてきた比屋根さん。このプログラムで気づいたのは「私がしたいのは創業ではなかった」ということ。同じ思いで本気でやっている仲間——茨城フロッグス——がすでにいる。だから、そこで新規事業をつくる。「何かに挑戦したいけど、何をやりたいかわからない」と泣きながら相談してきた高校生の声から生まれたのが、10代のための実践トレーニング「NO RULES」。自分のレベルは自分で決める。答えは教えない対話と、社会実装の場を、全8回・約100日で提供します。
コメンテーターから:「首都圏に近い茨城だからこそ、対象を県外にも広げられる」「ポートフォリオが残る、保護者コミュニティがある——そこが本当のバリュー」

須井直子さん|ママ同士が助け合う「カリママ」
求人・不動産・メディアと「人の転機」に携わってきた須井さん。24歳で結婚・出産・離婚を経験し、実家に戻ってからは親に全否定される日々。「シングルマザー」という言葉に長く苦しめられ、息子と二人で人口60人の鳩間島へ。頼っていいと思える人が、そこにいたから。「逃げるも向き合うも、選択していい」。ママ同士がスキルや特技を持ち寄り、顔が見える関係のなかで助け合える借り物競争プラットフォーム「カリママ」を、沖縄の共同売店の互助の仕組みになぞらえて構想します。社名に込めたのは「もしかしたら」——もっと早く向き合えていたら、という原体験です。
コメンテーターから:「相互扶助・共存共栄というコザ信用金庫の精神にぴったり。ぜひ沖縄市で」「作りたいのはマッチングサービスではなく共同体。シェアリングの失敗事例もしっかり研究を」

東寛之さん|スポーツバイク業界の「稼げない構造」を変える
20年以上スポーツバイク小売に携わり、トライアスロン事業をわずか3年で全国から声がかかる規模に育てた東さん。運動音痴だった小学生時代から、柔道と自転車に出会って人生が変わった。けれど自分を遠くへ連れて行ってくれたこの業界は、構造的に「稼げない」まま優秀な人が去っていく。「仕事の価値が、携わる人の貢献へ正しく反映される社会」を掲げ、トライアスロンバイクに特化した専門店を、ビジネスパートナーと家賃を分担しながら購買人口の中心地に構え、自ら”稼げる構造”の最初の実証者になります。
コメンテーターから:「縮小市場にあえて向き合う。大手町なら健康・通勤といった別の市場開拓の観点も」

中村有希さん|離島の妊婦に、声でつながる助産師を
産婦人科の看護師として多くの妊婦と関わってきた中村さん。説明に「はい」と答えるだけで内容を理解できていなかった外国人妊婦のこと、島根県・海士町で出会った、本土への転院を前提に検診の機会すら失いかけていた妊婦のこと。「どこに住んでいても、妊娠・出産のリスクは変わらない。でも離島では、その問題がより深刻化している」。離島専用のオンライン助産師サービスとして、対面でリスクを一緒に確認したうえで、24時間電話で相談できる”伴走型”の助産師をつなぎます。「大丈夫だよ、心配しなくていいよ——その声で救われる。声でつながることを最優先に」。
コメンテーターから:「離島でなくてもニーズがある。毎回同じ説明をしなくていい”パーソナル助産師”の価値が伝わると広がる」「人の命を取り上げる仕事以上にすごい仕事はない。実証も含めて力になりたい」

倉岡遊正さん|「伝えたい」を伝えられないで終わる人をなくす
東京から沖縄へ戻り、家業の貸衣装店を継ぐ倉岡さん。戻ってきた理由は、両親の老いのスピードと、一緒にいられる時間の短さ。毎日「感謝」を伝えてきたつもりが、母の病をきっかけに気づいた——それは日頃のただのお礼で、思いの丈は伝えられていなかった。「伝えたいを、伝えられないで終わる人をなくす」。忙しい経営者のために”思い出す時間”をつくり、一緒に人生を整理して手紙や動画にする。基本は無料、動画でストーリーを発信し、価値を感じた人が払う。その挑戦を、家業とは切り離して始めます。
コメンテーターから:「手紙でも動画でも、アウトプットにとらわれないプロデュース業と語るほうが届く」「3期目でどれくらいの売上を見込むか。創業前に検証を」

チェックアウト:4ヶ月を走り抜けて、今の気持ち
賞の発表の前に、受講生一人ひとりが4ヶ月を振り返るチェックアウト。「ホッとしている」「最初の頃は、自分に向き合う時間が深くて、ずっと閉じ込めていたことと向き合うのが辛かった」「創業じゃなくていいよね、と何度も言われて最初はショックだった。でも向き合った先で、決断できた」「夜勤の合間に取り組んで、毎日寝られなかった。それでもここまで来られて本当によかった」。
なかには、最初はつくば拠点のスタッフとしてプログラムに関わっていたところから「見ているだけでは辛い」と途中で受講生に転じた須井さんも。麻生さんいわく「翌年の受講生になることは何度もあるけれど、途中から受講生になったのは初めて」。
「起業家へのリスペクトが、ものすごく増した」「今回やっと、初めて自分を掘った。これなら自分の力で挑戦できる」——チェックアウトの時点で、すでに会場は少し涙ぐんでいました。

4つのアワードの発表
🏆 KSA賞(コザスタートアップ商店街賞):倉岡遊正さん
副賞は、コザスタートアップ商店街への1年間の入居と、営業同行や顧客紹介など「事業価値の向上」に直結するサポート。「後継ぎとして守るものがありながら、新しい何かに挑む難しさ。コミュニティのリーダーだからこそ、一番近くで力になりたい」(豊里さん)

🏆 コザ信用金庫賞:須井直子さん
副賞は、コザ信用金庫・起業支援部による創業までの伴走支援。「相互扶助・共存共栄というコザ信用金庫の精神に、迷いなくぴったりだった。必ず沖縄市で」(前屋さん)

🏆 みらいスタジオ賞:豊田睦雄さん
副賞は、みらいスタジオのチーム(開発・デザイン・海外マーケット)との、支援内容を詰めるディスカッション。「油を売るだけでなく、ひまわり畑という資産でどんな体験設計ができるか、真摯に向き合いたい」(兼城さん)

🏆 麻生賞:中村有希さん
副賞は、今後の起業家人生で「1回だけ、何でも言うことを聞く」権利。「人一倍、自分の内面に向き合い、見たくないものまで取り出すプロセスの中で、ものすごい社会課題を解決する事業にたどり着いた。たった一人の思いから、世の中を動かす人が生まれるかもしれない」(麻生さん)

麻生さんから総評
「4ヶ月前の皆さんは、本当に何もなかった。ビジネスアイデアもほとんどなく、やりたいことはあるけれど、中には”本当に創業するのかな”という方もいた。そこから2週間ごとに進捗を問われ、深掘りが足りないと言われ、Zoomの前で泣き崩れながら、今日を迎えてくれた。自分の一番根っこの深いところから創業動機をつくり、それが誰かの心に届いて『一緒にやろう』と言ってもらえる…そのストーリーを手にしてもらいたかった。10通りの本当に大切な話を、ありがとうございました」
主催4拠点から、そして「今日から始まる」
最後は主催4社からのご挨拶。琉球ミライ(沖縄)からは「卒業がゴールではなく、これからもサポートしていきたい」。北海道事務局からは「蓋をしたまま人生を終えることもできる中で、蓋を開け、向き合い、涙を流し、フィードバックを積み上げた結果が今日のピッチ。毎年この場に立ち会えて本当によかった」。しびっくぱわーの堀下からは、今年の茨城・つくば拠点には、沖縄在住の社員や東京在住のつくばゆかりの方、熊本から沖縄への移住を準備している茨城出身の方まで、県内にとどまらないメンバーが参画したことを紹介したうえで、こんな言葉を。
「一人でやっていると、どうしても狭く、苦しくなる。全く関係ない事業でも、一緒に走っている同期がいることは本当に大切。僕自身も起業家として、皆さんの劇的進捗に”今回は負けてるかもしれない”と毎回思わされました。ここからは変わらずコミュニティであり、とはいえライバル。残念なお知らせですが、今日で終わりではなく、明日からもDay2を繰り返し、一年経ってもWhyを深掘りし続ける日々が待っています。今日くらいは飲んで忘れて、明日からまた一緒に走りましょう」
「ゼロからの起業」は、来年も必ず開催されます。今日の発表を聞いて「やばい、起業したほうがいい」と思ってしまった方、お近くのこれから起業する方は、ぜひ次の期で。
会場を出れば、コザの商店街に夜が来ていました。10人の起業家人生は、ここから始まります。
■ 主催:琉球ミライ株式会社(沖縄)/Startup Bootcamp 北海道事務局(北海道)/株式会社しびっくぱわー(茨城・つくば)/株式会社創造舎(静岡)
■ 会場:Lagoon KOZA(コザスタートアップ商店街/沖縄市)
■ ゲストコメンテーター:豊里健一郎さん(フォーシーズ株式会社 代表取締役)/前屋誠さん(コザ信用金庫 専務理事(代表理事))/兼城駿一郎さん(株式会社みらいスタジオ 代表取締役)
■ 講師:麻生要一さん(起業家・投資家・経営者・創作家)
■ プログラムHP:https://civicpower.jp/startup-bootcamp/






