【report #116】県北BCPセミナー編 vol.1&2 -Business Challenge Program-
6/3(土)に開催した『県北BCPセミナー編 vol.1&2』の様子を紹介します!
Business Challenge Program(県北BCP)では、茨城県県北振興局主催のもと、茨城県県北地域の企業による事業開発を通した将来的な雇用創出を目的に、事業開発に必要となる自社の課題や特色を理解し異業種との対話を通して知見と視点を学ぶセミナーと、ディスカッションとPoCを通した事業開発を実現するアイデアソンを開催しています。今年度も県北BCPでは、6回のセミナーと7回のアイデアソンを開催し、事業開発を通した将来的な雇用創出を目指していきます!
セミナー編vol.1&2では「中小企業が新規事業を生み出すイノベーションの源泉」及び「経営の質を高めるリーダーシップと経営課題の抽出」をテーマに、株式会社小野写真館 代表取締役 小野哲人さんと株式会社ヤマオコーポレーション 代表取締役 鬼澤慎人さんをお招きし、ご自身の経験から感じている大事なことをたっぷりお話しいただきました!大雨による影響で急遽オンラインのみでの実施となりましたが、Zoomのブレイクアウトルームやチャットを活用してインタラクティブなセミナーとなりました。
本レポートでは、セミナー内容を抜粋して紹介します!
今回小野さんからは、小野写真館の歴史を振り返りながら新規事業創出のリアルと人材の大切さについてお話しいただきました。
🙋♂️ 小野 哲人さん(株式会社小野写真館 代表取締役)
【新規事業創出のリアル】
小野写真館は、世界に「笑顔」「幸せ」「感動」を連鎖させることをミッションに、茨城を中心として各地に進出しています。始まりは、ひたちなか市の1店舗の写真館から。ブライダルフォトという小さな事業を「フォトウェディング事業」として業界を変え、周辺事業もまとめて事業化。衣装レンタルやレストランウェディング、結婚式場などをトータルでプロデュースする事業に。成人式撮影の事業は、振袖レンタルブランド「AZ」をつくり、振袖レンタルと写真撮影を両方プロデュースする事業に。今では小野写真館で1番の売上を上げています。また、新しいスタイルのフォトスタジオ「Cocoa」をつくり事業展開しています。
小野写真館が考えているビジネスモデルは「生涯顧客化」。結婚式を挙げていただいたお客さまにお子さんが産まれて七五三、入園入学、成人式、結婚…というカタチでずっとつながっていくことで、生きるところから亡くなるところまで一生絡んでいける事業モデルを目指しています。実際に、結婚するときから小野写真館を使い続けてくれる家族もおり、今後は日本全国にこのような家族をどんどん増やしていきたいと考えています。
【家業を継ぐという決断】
もともと写真館には「ダサい」「格好悪い」「オタク」「暗い」というイメージがあり、家業を継ぐ気はありませんでした。30歳で起業したいと考えていたので、金融業界に。外資系金融時代の経験は、今の自分の大きな財産になっています。その後、自分が家業を継がないと小野写真館がなくなってしまうのではないかと考え、家業を継ぐことを決断。写真についての知識が全くなかったため、アメリカへ写真留学をしました。その最中に、新潟県中越沖地震が発生。多くの方が写真だけを持って逃げたという記事を読み、写真館という仕事に可能性を感じるようになりました。そこで感じたことは「すべては自分の考え方次第!」ということ。
【すべては小野写真館から始まった!】
家業を継いで、まずは事業再生からスタート。やったことは、下請けからの離脱と小野写真館にあったコンテンツと周辺事業への参入だけです。フォトスタジオ事業と周辺事業をかけ合わせることで、新規事業を構築しています。
小野写真館を引き継いでから、3度会社が生まれ変わりました!
◎小野写真館1.0:地域No.1の写真屋さん
◎小野写真館2.0:事業の取捨選択と周辺領域への新規事業創出
※コロナで経営課題が表面化し、会社をゼロからつくり直すことを決断!
◎小野写真館3.0:M&Aや出資を通じた感動体験産業への昇華
既存事業と買収事業を組み合わせることで参入障壁が高いオンリーワン事業を生み出すことをひとつのテーマとし、M&Aを実施。M&Aは、変化を創り出し時流に乗り、オンリーワンのビジネスモデルを構築するチャンスだと考えています。「小野写真館はオフラインとオンライン双方における感動体験創出日本一を目指す」ということを社内外に伝えています。とにかく変化をすることと変化を容認することを意識しています。
【何をやるかではなく誰とやるか!】
コロナをきっかけに、何をやっても予測できない社会環境の変化によってダメになりうるということに気づき、改めて誰とやるかの重要性を理解することができました。誰とやるかが間違っていなければ、どんな事業でも変化に合わせて成功させることができると考えています。だからこそ、採用段階が1番大事。採用だけは、今でも自分が時間と手間をかけている唯一の仕事です。正直チーミングと人材育成については、明確な答えはありません。そんな中で、徹底的に任せて責任を背負うことと、モチベーションクラウドで組織のモチベーションを定量化することを実践しています。
目指すは、ワンピースのような組織!常に挑戦し続ける小野写真館の船に乗りたいという人を採用します。同じ船に乗り目標を叶えるには経営理念が絶対的に必要だと考えているので、自分ではなく経営理念にみんなの想いを紐づけるようにしています。
ブレイクアウトルームで感想をシェアしたあと、鬼澤さんから小野さんの話を受けてリーダーシップについてお話しいただきました。
🙋♂️ 鬼澤 慎人さん(株式会社ヤマオコーポレーション 代表取締役)
【小野さんの話を聞いて】
実践している人はすごいなと改めて実感。リーダーシップの教科書通りの話だなと感じました。人は知ることはできても、それを実際やるというのはなかなか難しい。この大変な時代だからこそ、実践していることに対する成果があると思います。小野さんと自分の共通点は、家業があって小さい頃から間近で商売を見て育ったことと、外資系金融業界で働き成果至上主義な環境にいたこと。小さい頃経営者としてまちづくりに取り組んでいた両親を見てきた中で、金を儲けた奴が1番偉いという業界で働くことに我慢できなくなり、30歳のときに水戸に戻ってきました。
【「経営の品質」という言葉に出会って】
「経営の品質」という言葉に出会ったことで、経営は量ではなく中身が大事だと気づき、自分で勉強しながら他の企業や自治体にも勉強してほしいと思うように。勉強していく中で、経営の品質の根幹は「人と組織の品質」であるということに辿り着きました。では、人と組織はどう成長していくのか?それは、管理やマネジメントではなく、リーダーシップであると知りました。
そんなとき日本では「人はコストだ」「人を育てるよりも即戦力をとれ」という考え方が広がり、リストラという言葉が出始めました。それを見て「これまで日本がやってきたものをぶち壊そうとしている」と思い、これからますます経営の品質やリーダーシップが大事になる時代が来ると考えるようになりました。そこで、改めて人づくりや組織づくり、いい経営をするということを、特に中小企業や自治体に対して誰かがお手伝いしないといけないと思い、誰もやらないならそれを自分がやろうと決意。同時に家業を継がないという決断もし、37歳のときに独立を決めました。
「7つの習慣」という本の中で好きな言葉は「1番大切なことは、1番大切なことを、1番大切にすること」。これは難しいけど大事なことだと、小野さんの話を聞いて改めて感じました。1番大切なことを、1番大切にしていきましょう!
ここからはゲストのお話の中で気になることをさらに深掘り!
【地元にかける想いはどう育まれましたか?】
鬼澤さん:純粋に水戸が大好き!世界中歩いていても水戸よりいいところはないと思うくらい。父親のまちづくりが大切だという考えの影響を大きく受け、小学生の頃からまちのビジョンを考えるのが大好きでした。
小野さん:大学時代は田舎者扱いされるのが嫌で、茨城には戻らないと思っていました。実際地元に戻ってきて根を張るようになると、最高の場所だと思うようになったので、今ではそれをちゃんと伝えていくようにしています。茨城から派生した会社だからこそ、ここを拠点にすることにはこだわっています。
【今新規事業を立ち上げる上で大事なポイントはなんだと思いますか?】
鬼澤さん:新規事業は手段。目的が何かが大事。「なんのために」が明確じゃないと、手段が目的化してしまいます。そして「なんのために」に共感してくれる人が集まらないと、その事業は動いていかないと思っています。
小野さん:同じ業界の中で話をしていても、その枠を越えることはできません。だからこそ、多様な業種業態、年齢の方々の考えを否定せずに話をすることが大事。そして、オーナーの根幹にある想いに共感が生まれないと人は集まりません。オーナーシップの本質と多様性が新規事業を生む上で大事になると思います。
【新規事業をスタートさせる上でのポイントを教えてください!】
小野さん:既存事業がうまくいっていることや金融機関との関係性構築は、まず大事。最後はやるかやらないか。とりあえずやることが大事!
鬼澤さん:今やっていることを継続するだけではマイナス。世の中は常に変化しているからこそ、変化に対応していかないといけません。新規事業を始める上で、もちろん自分がやりたいことも大事ですが、本当に世の中の役に立つのかとか社会課題が何なのかを捉えることも大事。テストマーケティングを高速回転し、どんどんバージョンアップしていきましょう!
【新規事業を伸ばしていくタイミングで大事なことはなんですか?】
鬼澤さん:経営者は二律背反することにどれだけ耐えられるかが大事。新規事業で言うと、大胆さと繊細さです。事業は絶対失敗するという前提で進め、失敗しないためにどうしたらいいかを考え、いつやめるかも考えていないといけません。リーダーは割り切れない答えと向き合い続けなければいけないので、楽しくもありしんどくもあります。だからこそ、冷静に判断できる参謀が隣にいてくれるといいなと思います。
小野さん:新規事業を伸ばしていくためにはパワーとお金がいるので、それをどれだけ準備できるかが経営。経営者が既存事業と新規事業のどちらにコミットするのか、お金をどこから持ってくるのかによってもやり方は変わるので、やり方に合わせて変えていく必要があります。
【最後にひとこと!】
小野さん:ビジネスの本質は、自分が楽しいかどうか。自分が楽しくてアクションした結果として、社会や社員のためになるものを見つけられると、最大限のパワーを発揮できると思っています。応援していますので、みんなで頑張っていきましょう!
鬼澤さん:楽しむのはめちゃくちゃ大事なエネルギーです。未来はわからないから楽しい。未来はつくることができるから楽しい。そして、どんな人にも社会や未来をつくり変える力があると信じることが大事。人は無力ではなく微力だからこそ、みんなで力をあわせる。「すべての社会運動はたったひとりから始まる。」それを信じて、みんなで楽しさを増やしていきましょう!そして、そのしんどさを楽しみましょう!
次回はアイデアソン編!
次回は7/22(土)に日立地区産業支援センター(HITS)にて「県北BCPアイデアソン#1 -Business Challenge Program-」を開催します!
今シーズンもアツい想いを持ったBCPリーダーと、様々な経験を有したとアイデアを持つBCPチャレンジャーとともにアイデアソンを実施。ぜひみなさん、奮ってご参加ください!!
\やるぜ、県北!みんな、集まれ!/