100年の技術をガチャガチャで届ける──県北BCPアイデアソン2025最終報告会・審査員特別賞(TNC賞)のチーム赤津ねじ商店が描く、日立の未来
この記事のポイント(1分で分かる)
- 県北BCPアイデアソン2025最終報告会で審査員特別賞(TNC賞)を受賞したチーム赤津ねじ商店の挑戦を紹介
- 日立市で創業100年を超えるネジ製造会社が、ガチャガチャでネジの価値を届ける事業を構想
- チーム名:チーム赤津ねじ商店
- 母体企業:株式会社赤津工業所(日立市)
- テーマ:ネジに触れる日常をつくる
- 本記事の結論:チーム赤津ねじ商店は、本物のネジを使ったガチャガチャという「触れる体験」を通じて、100年の技術の価値を届ける第一歩を踏み出しました
次年度の参加を検討する方へ:
「価値があるのに伝わらない」。
ものづくりに携わる方なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。どれだけ良い技術があっても、日常で意識されなければ、その価値は届きません。伝え方が分からない。届ける接点がない。そして何より、「BtoBの技術を一般の人にどう届ければいいのか」という悩み。これらが多くの人の前に立ちはだかります。
県北BCPアイデアソン2025最終報告会では、そんな課題に挑む挑戦が、具体的なかたちとしていくつも発表されました。そのなかで審査員特別賞(TNC賞)を受賞したのが、「ネジに触れる日常をつくりたい」と語るチーム赤津ねじ商店です。ここからは、当日の言葉と具体例をたどりながら、その挑戦の輪郭を追います。
県北BCPで挑む「価値を届ける」仕組みづくり
県北BCPは、県北地域の活性化を目指すコミュニティです。業種・職種・年齢・性別・国籍を超えた挑戦者が集まり、アイデアソンを通じて新規事業を構想します。半年間の伴走で、ビジネス関係人口の創出を目指すプログラムです。
茨城県県北振興局が主催し、株式会社しびっくぱわーが運営。参加者は半年間で事業構想を磨き、最終報告会で発表します。
1919年創業・100年の技術が支えてきたもの
チーム赤津ねじ商店の母体である赤津工業所は、日立市で1919年(大正8年)に創業しました。ネジの製造販売や機械加工を行う企業です。
「継続することの価値を大切にし、技術と地域、人と人をつなぐ」を理念に掲げ、100年以上ネジをつくり続けてきました。
最終報告会のステージで、チーム赤津ねじ商店は会場にこう問いかけました。
「この世界からあるものが消えたら、明日私たちは生きていけません。何だと思いますか?」
答えは「ネジ」です。
「ネジは建物や車、電車、スマホ、医療機器など、多くのものに使われています。もし供給が滞れば、私たちの社会を支える多くのインフラに支障をきたす可能性があります。ネジは長い歴史の中で文明を支えてきました。しかし、日常で意識されることは多くありません。価値があるのに伝わらない。それが私たちの課題です」
チーム赤津ねじ商店が直面した「伝わらない」という壁
「なぜその価値が伝わらないのか?」
チーム赤津ねじ商店は活動の中で、ネジの価値が届かない理由を問い直しました。発表では、次のような点が挙げられました。
- 認知の壁:ネジは製品の内部に隠れている。完成品を手にしても、ネジを意識することがない
- 接点の壁:日常でネジに触れる機会がそもそもない
- 表現の壁:BtoBの技術を一般の人にどう届ければいいか分からない
「大きな理由の一つは、日常でネジに触れる機会がないからです。それなら手に取れるかたちで価値を届けよう」
その想いから、一般の人にも届く「日立のお土産づくり」への挑戦が始まりました。
解決アイデア:本物のネジを「ガチャガチャ」で届ける
この課題に対し、チーム赤津ねじ商店が打ち出したのは、意外にもお菓子ではなく「本物のネジを使ったガチャガチャ」でした。
最初に考えたのは、ネジの形をしたグミでした。しかし、試作したものの立体的なネジの形にはなりませんでした。社長が言った一言があります。
「立体じゃないならそれはネジじゃない」
まさしく、ネジ屋のプライドです。100年ネジをつくり続けてきた会社として、妥協はできません。企画は白紙に戻りました。
それでも諦めなかったチーム赤津ねじ商店は、新しい視点を求めて県北BCPに参加。メンバーとネジを見ながら議論する中で、あることに気づきました。
「そもそも本物のネジは美しい。宝飾品や高級時計の意匠にも、ネジの形が取り入れられることがあります。ネジそのものに十分なポテンシャルがある。それが私たちのたどり着いた答えでした」
ガチャガチャを選んだ3つの理由
チーム赤津ねじ商店は3つの理由を挙げました。
- 市場性:カプセルトイ市場は近年拡大傾向にあり、ニッチ素材にも挑戦余地がある
- 唯一性:単なる「ネジを扱う会社」ではなく、「100年以上ネジをつくってきた会社」として本物を語れる
- 独自性:ガチャガチャを回す体験そのものが、ネジを部品からワクワクするものに変える
「ガチャガチャを回す体験そのものが、ネジを部品からワクワクするものに変えてくれます」
この言葉が示すのは、「部品」を「文化」に変えるための発想です。
今回のガチャガチャ構想と仕様
今回のガチャガチャは、茨城県ものづくり共同受注隊「GLIT」に所属するものづくり企業との特別コラボとして紹介されました。
商品仕様
- 本物のネジを使用
- 6種類のネジの特性を表したテーマ設定
- オリジナルの金属プレート付き
- 1種類だけシークレットあり
構想の狙い
- 認知:地域に知ってもらう
- 収益:活動を続ける燃料に
- 提供価値:触れる体験を通じてネジの魅力を伝える
中学生の目が輝いた ── 価値が届いた瞬間
チーム赤津ねじ商店が特に意識しているのが、子どもたちへの価値の伝達です。
県北BCPのアイデアソンで会場内アンケートを実施したところ、キーホルダー案への支持が多く寄せられるなど、一定の反応が得られました。
そして最大の発見は、子どもたちでした。
「職業体験に来た中学生にネジのキーホルダーを見せると、彼らの目が輝いたように見えました。普段は目立たない部品が、宝物のように感じられた瞬間だったのかもしれません」
ネジという存在が、誰かの「特別」に変わる。その瞬間を目の当たりにして、チーム赤津ねじ商店は確信を得ました。
3段階で実現を目指す事業構想 ── チーム赤津ねじ商店が描く未来
チーム赤津ねじ商店は発表の中で、事業構想についても語りました。ガチャガチャを起点に、段階的な展開を構想しています。
- ステップ1(本社から地元のイベントへ):まずは触れるきっかけから。SNS(Instagram・X)も開設し、発信を開始
- ステップ2(県内コラボを起点に県外・JRなどへ展開):観光地や駅への設置を目指し、県内のコラボレーションを広げる
- ステップ3(地域のクリエイターとともに新たな展開へ):雑貨・食品・アパレルなど多方向へ展開。若手クリエイターによる仕事につなげる
「今回のガチャガチャは広告だけの企画ではありません。量産化を目指し、継続的な収益モデルとして成立させる構想です」
「ネジに触れる日常は、やがてネジにあふれる日常へ」
発表の終盤、チーム赤津ねじ商店は未来を描いた動画を紹介しました。
動画の中で、ある親子がこんな会話を交わします。
「父さん、これってただのネジなのになんか特別に見えるね」
「ね。ネジって小さいけどいろんなものをつないでくれるんだ」
チーム赤津ねじ商店はこうビジョンを語りました。
「ネジに触れる日常は、やがてネジにあふれる日常へ。この一歩を未来へつないでいきます」
まとめ
「挑戦」という言葉は、一人では重すぎても、チームなら軽くなります。
チーム赤津ねじ商店が県北BCPで見つけた「触れる機会をつくる」という考え方は、伝わらなかった価値を、体験を通じて届ける第一歩でした。
この記事の要点3つ
1. 触れる機会をつくる:日常でネジに触れる機会がないから、価値が届かない。ガチャガチャという体験で解決
2. 本物で勝負する:グミではなく本物のネジ。100年のプライドが生み出す「美しさ」をそのまま届ける
3. 事業として継続する:広告ではなく、継続的な収益モデルとして設計
この記事の核心は、地域でも、未完成でも、挑戦は始められるという希望です。
ものづくりのまちとして歩んできた日立に、ネジを通じた新たな価値観が加わる。100年の技術と、ガチャガチャという軽やかなアイデアの掛け合わせが、次の100年へとつながっていく ── そう感じました。
次の一歩へ
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■ 主催:茨城県(担当:県北振興局)
■ 運営:株式会社しびっくぱわー
■ 共同運営:エヌエヌ生命保険株式会社
■ 後援:日立地区産業支援センター









