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プレゼンテーション特集 vol.5|チームW Coral【審査員特別賞受賞】

1/20(土)に開催した県北BCPアイデアソンの集大成「県北BCPアイデアソン2023最終報告会」で、審査員特別賞を受賞されたチームW Coralのプレゼンテーションをご紹介します。



このプレゼンテーション特集では、県北BCPアイデアソン2023最終報告会に登壇した10チームの活動実績をチームごとに紹介します。今回は、審査員特別賞である常陸frogs賞を受賞されたチームW Coralによる『訪問看護で自分らしく生きるまち日立市へ』です。
*1/20(土) 県北BCPアイデアソン2023最終報告会の受賞者や当日の様子についてはこちらの記事をご覧ください。

訪問看護の現状

現在の訪問看護のカテゴリーにおいて日立市がどのような状況かを、皆さんはご存知ですか。状況は、かなり悪いと言わざるを得ません。現在の日立市には、75歳以上の方2,400人につき1つの訪問看護ステーションしかありません。1/2,400という割合は、全国47都道府県の中でワースト2位の山形県と同じ割合です。この状況は、急性期を終えた入院患者様にとって、病院を出た後の選択肢が少ないことも意味しています。この現状は、高齢化が進み医療機関も不足する日立市において、深刻な問題です。


私は、大好きな祖母が病気がちだった様子を見て「祖母の力になりたい」と思い、訪問看護の道に進みました。当時の私の家族は、自宅で祖母を介護していた時期もありました。しかし、主に介護をしていた母がどんどん疲弊していき、入院という選択をせざるを得ませんでした。入院中の祖母は「家に帰りたい」と何度も言っていましたが、家族だけで介護をすることは本当に大変なことです。ただ「もっといい最期の迎え方があったんじゃないか」と、私は今でも祖母のことを思い返すたびに後悔しています。この経験から「病気を抱えながらも、住み慣れた家で暮らしたい」と考える方や、介護をする側の “家族” を支えたいと思い、日立市に訪問看護ステーションまりあ(運営法人:株式会社W Coral)を立ち上げました。日立市は、今でも私の両親が暮らす、私の地元です。

訪問看護ステーションの立ち上げ

日立市に訪問看護ステーションを立ち上げるため、まず私は東京で訪問看護ステーションの立ち上げを経験し、管理者として働きました。実際に働いてみると、国の定める訪問看護のサービス内容だけでは家族のことを救いきれないという現状を知りました。そこで “キャンナス” を加えて、家族のことも支えられる体制にしました。 “キャンナス” とは “can(できる)” と “nurse(ナース)” で “キャンナス” という造語です。家族が家庭の中で行っていることを代わりにさせていただくサービスです。買い物の同行や、病院を受診する際の付き添いなどを行っています。

日立市に訪問看護ステーションを立ち上げた当初のお話しをさせてください。利用依頼は多くあるのに看護師が集まりませんでした。看護師が足りないので、依頼をストップせざるを得ない状況でした。この状況を改善するために、県北BCPアイデアソンに参加し、人材発掘について検討しました。

看護師の確保と課題

誰もが最初に思いつくであろう解決策は、看護師を増やすことです。ただ、看護師は、すぐになれる職業ではありません。そこで私たちは、潜在的看護師に目をつけました。

私が以前手術室で働いていた時のお話をします。私自身、妊娠中にドクターストップがかかり、思うように働けなかったことがありました。働けないことに対して同僚から心ない言葉を掛けられました。また、子育てをしながら働いている看護師がいつも周りに気を遣って働きづらそうにしているのを見ていました。「子育てと両立するのが難しい」という理由で、復職をしない看護師も周りにはたくさんいました。でも本当は、みんなが協力すれば、誰かが自己犠牲を払うことなく、みんなが働きやすい職場はつくることができるはずです。そして、社会に貢献できる人も増えるはずです。

看護師が働きやすい職場とは?

県北BCPアイデアソンでは「看護師が働きやすい職場とは?」を検討することから始めました。チームメンバーとのディスカッションからヒントを得て、看護師の実情を把握するためのヒアリングを行いました。採用活動を通して出会った方たちにヒアリングをした結果「働きたいのに働けない」という潜在的な看護師がいました。ただ、彼女たちの声からわかったことは「今の医療についていけない」という不安を抱えていることや、病院で勤務する場合のシフトと今のライフスタイルが合わないという問題があることでした。

そこで、今まで私たちが行っていた雇用の形に加えて、復職時の働き方の選択肢を増やすことにしました。当初 “キャンナス” は介護をする家族を支えるためのサービスだと私たちも思っていました。しかし、ヒアリングを通して “キャンナス” は新たな雇用を生める働き方だと気づきました。「今の医療の現場で働くには、ハードルが高い」と感じている潜在的看護師には、まず不安を取り除くための入り口として “キャンナス” を提案しました。 “キャンナス” は医療の現場から離れていたスキルと経験のブランクを埋めることができます。

また、思いがけない発見がひとつありました。採用活動を始めて4ヶ月目の出来事です。ある看護師を事務職として採用しました。彼女は病院勤務により心に深い傷があり、看護の現場で働くことが困難になってしまいました。私は彼女に出会った時にすごく悔しく悲しかったです。トラウマになっても「看護師として働きたい。看護師の仕事が好きで、人の役に立ちたい」と思っているのに、このような貴重な人材が埋もれてしまうなんて、すごくもったいないことです。「仕事への思いと、看護師として働いた経験のある彼女だからこそできる事務の仕事がある!」と思い、事務職で働くことを提案し、採用しました。また、県北BCPアイデアソンの期間中には、彼女の他にも看護師を1人採用しました。

自分らしく生きられ、多様性が受容される社会へ

「働きたい、人の役に立ちたい」という思いのある潜在的看護師の発掘を私たちが進めることで、自宅での介護を必要としている方や、自宅で介護をする家族をひとりでも多く支えたいと思っています。今回の県北BCPアイデアソンでの活動を通して、潜在的看護師の採用と “キャンナス” の導入の相性は、かなり良いと手ごたえを感じています。

また、私たちが潜在的看護師が活躍する職場の提供をすることが「利用者様と、その家族が病を理由に諦めない社会」が茨城県北地域に広がっていくことにつながると思っています。茨城県北地域にお住まいのみなさんや、ご両親が茨城県北地域にお住まいのみなさんは、私たちがいるのでどうか安心してお過ごしください!最後になりますが、みんながそれぞれ自分らしく生きられ、多様性が需要される社会を、訪問看護を通して実現していきます。



 

県北BCPアイデアソン最終報告会受賞者が登壇します!

県北地域のネットワークをさらに広げるためのイベント県北BCPセミナー編vol.6「新規事業開発と新規起業が生み出す県北イノベーション」にて、茨城県知事賞を受賞されたチーム菊池精機の菊池 正宏さん、オーディエンス賞を受賞されたチームDAIGO SAUNAの和田 真寛さん、優秀賞を受賞されたチーム佐々木製作所の佐々木 謙彦さんがピッチを行います。

キーノートでは株式会社imaの三浦 亜美さんをお招きし「新規事業開発や新規起業におけるコラボレーションの重要性」についてお話しいただきます。合同ピッチでは、県北BCPアイデアソン最終報告会受賞者と県北BSS最終プレゼンテーション受賞者からのピッチを実施し、県北地域でスタートした新しい取り組みについてお話しいただきます。イベントの最後には交流会を実施し、県北地域での広いつながりとコラボレーションを生み出す機会をつくります。

県北地域の活動に少しでも興味のある方は、新たなつながりとアイデアを求めて、ぜひご参加ください!

\やるぜ、県北!みんな、集まれ!/