「想い」を持続可能な「仕組み」へ県北BCPアイデアソン2025最終報告会・審査員特別賞(小野写真館賞)のチームにこにこはっちぃ〜が描く、高萩の未来
この記事のポイント(1分で分かる)
- 県北BCPアイデアソン2025最終報告会で審査員特別賞(小野写真館賞)を受賞したチームにこにこはっちぃ〜の挑戦を紹介
- 高萩市で月1回開催する「にこにこ地域食堂」の持続可能な事業化への道のり
- リーダー:にこにこ地域食堂 代表 吉田 夏奈さん(高萩市)
- テーマ:みんなでつくる、みんなの ”実家” サステナブルな事業にするための商品開発
- 本記事の結論:チームにこにこはっちぃ〜は、チームの力と収益の仕組みを取り入れることで、活動を「生き方のモデル」として持続させる第一歩を踏み出しました
次年度の参加を検討する方へ:
「誰かの役に立ちたい」という純粋な思いで始めた活動が、いつの間にか自分自身を追い詰める重荷に変わっていませんか。
地域のために始めた大切な活動。続けたい気持ちはあるけれど、「来年、助成金が切れたらどうしよう」「結局、自分一人で頑張るしかないのか」という孤独感。活動を続ける中でこうした課題に直面するケースは、少なくありません。
県北BCPアイデアソン2025最終報告会では、そんな葛藤の先にある挑戦が、具体的なかたちとして発表されました。そのなかで「想いだけで続けてきた活動を、持続可能な事業にしたい」と語ったのが、チームにこにこはっちぃ〜です。ここからは、当日の言葉をたどりながら、地域を「Big family」に変えていく彼女たちの挑戦を追います。

県北BCPで挑む「持続可能な地域食堂」への転換
県北BCPは、県北地域の活性化を目指すコミュニティです。業種・職種・年齢・性別・国籍を超えた挑戦者が集まり、アイデアソンを通じて新規事業を構想します。半年間の伴走で、ビジネス関係人口の創出を目指すプログラムです。
茨城県県北振興局が主催し、株式会社しびっくぱわーが運営。半年間で事業構想を磨き、最終報告会で発表します。
さまざまな人と関わることができる環境で育った幼少期の記憶
チームにこにこはっちぃ〜 リーダー 吉田 夏奈さんが地域食堂を始めたきっかけは、自身の幼少期にありました。
「自分の家はアパートだったのですが、さまざまな人と関わることができる環境になっていました」
吉田さんは最終報告会のステージで、そう語り始めました。当日の発言では、自身の育ちの経験が活動の原点だと語ります。地域の人たちが野菜を持ってきてくれたり、困ったときに手を差し伸べてくれたりした温かな優しさを知っています。
「地域に育ててもらった感謝を、恩返しとしてその想いを地域に還元したい」
その想いから生まれたのが、にこにこ地域食堂です。現在、吉田さんは会社員として電気工事士の仕事をしながら、個人事業主として簡易宿泊所「Luana」を営み、子育てをしながら活動を中心的に担ってきました。
彼女が掲げるビジョンは「Big family」。地域の中に、誰もが安心して戻れる場所をつくることが、活動の核となっています。

吉田さんが直面した「持続可能性」という壁
吉田さんは活動開始から1年の経験をもとに、地域食堂の課題を問い直しました。発表では、次のような点が挙げられました。
- 資金の壁:2024年度の活動運営費は約31万円。そのほとんどが助成金と寄付だった
- 人手の壁:活動を中心的に担ってきたが、一人で抱え込む状態が続いていた
- 制度の壁:現在活用している助成金も、期間限定の制度である
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査(2025年度)によると、全国の子ども食堂の困りごと上位には資金不足(47.2%)とスタッフ不足(42.2%)が挙げられています。にこにこ地域食堂もまた、この構造的な課題と向き合ってきました。現在活用している高萩市の「高萩まちづくり支援金」も、来年度で期間満了予定です。
「想いだけで続けてきた活動を、持続可能な事業にしたい。助成金が切れた時に困らないためにも、今から準備が必要だと思いました」

地域食堂を「続けるため」に必要だった、収益という選択
この課題に対し、吉田さんが打ち出したのが、マルシェ出展による収益化と認知向上でした。BCPのチームメンバーとともに練り上げた打ち手は、意外にも飲食ではなく「カスタムクレヨン」でした。
カスタムクレヨンとは、使い古したクレヨンをポキポキと折って型にはめ、熱を加えて再形成するワークショップ型の商品です。
「参加している子どもたちが主体的に、一緒に活動できるカタチにしたかったんです」
この言葉が示すのは、売上をつくることだけが目的ではないということ。活動に関わる「にこっこ」と呼ばれる中学生スタッフや子どもたち自身が、一緒にワクワクしながら挑戦できる。それこそが、にこにこ地域食堂らしい事業のあり方でした。
今回の収益化アイデア(カスタムクレヨン)の構造と検証
2025年12月上旬に初出展。収益モデルを実地で検証し、次なる課題を明確にしました。
- 狙い:認知(地域に知ってもらう)+収益(活動を続ける燃料に)
- 提供価値:子どもが”つくり手”として関われる体験型メニュー
- 見えた課題:制作中の待ち時間の発生、ターゲット設定の再検討
- 次の改善:回転率を上げるオペレーション、大人もほしくなるデザイン
「この決断は、にこにこ地域食堂にとって、とても大きな一歩となりました。」
と吉田さんは振り返ります。

多世代で支え合う にこにこ地域食堂の特徴
吉田さんが特に大切にしているのが、多世代で支え合う文化をつくることです。
中学生スタッフ「にこっこ」の活躍
吉田さんの妹とその友人たち、中学1年生3名が保護者の同意のもと運営をサポートしています。見守り体制のもとで、場をつくる側の喜びを学んでいます。
子どもからシニアまで集う場
月1回、簡易宿泊所「Luana」で開催。食事だけでなく芋掘りや相談会をセットにすることで、多世代の交流を実現しています。吉田さんの発表では、平均約40名、多いときは100名もの方々が集まったエピソードが紹介されました。

10年先を見据えた事業構想 にこにこ地域食堂が描く未来
吉田さんは発表の中で、事業構想についても語りました。にこにこ地域食堂は、居場所機能を中心に段階的な発展を構想しています。
- ステップ1(2025年〜2026年頃):簡易宿泊所「Luana」を拠点にプレイルーム開催と資金調達強化
- ステップ2(2029年頃):キッチンカーによる移動式地域食堂の実現
- ステップ3(2034年頃):フリースクールをメインにした事業形態への移行
地域食堂を起点に、学びと居場所が一体となった場を目指しています。
誰かが誰かを支えている未来がきたら、やめてもいい
ピッチの終盤、吉田さんは一見逆説的な言葉を口にしました。
「正直、地域食堂はない方がいいと思っています。この取り組みが自然とまち全体でできるようになるなら、その時私は、地域食堂をやめてもいいと思っています」
まち全体がひとつの家族のようになり、わざわざ看板を掲げなくても誰かが誰かを支えている未来──それが、吉田さんの描く「Big family」の完成形です。
「1年前の私は、収益なんて生むものではないと思っていました。でも今は、続けるための収益は本当に必要なものだとわかります」
吉田さんにとって、収益を上げることは目的ではなく、想いをつなげるための手段。その整理ができたことが、大きな転換点だったといいます。
最後は「ビジネスとしてではなく、生き方のモデルとして続けたい」という決意で、発表を締めくくりました。

まとめ
「挑戦」という言葉は、一人では重すぎても、チームなら軽くなります。
吉田さんが県北BCPで見つけた「続けるための収益」という考え方は、想いだけでは続けられなかった活動を、持続可能な仕組みへと変える第一歩でした。
この記事の要点3つ
- 原体験からの恩返し:地域に支えられた記憶が活動の原点
- 持続可能性への挑戦:助成金依存からの脱却、マルシェ出展で収益化の一歩
- 価値観の転換:「収益は生むものではない」から「生き方のモデルとして続けるために必要」へ
この記事の核心は、地域でも、未完成でも、挑戦は始められるという希望です。
高萩・にこにこ地域食堂に、持続可能な仕組みという新たな彩りが加わる。制度や資金面の工夫に加え、最後は人のつながりが推進力になる — そう感じました。

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■ 主催:茨城県(担当:県北振興局)
■ 運営:株式会社しびっくぱわー
■ 共同運営:エヌエヌ生命保険株式会社
■ 後援:日立地区産業支援センター