見慣れた風景が「特別」に変わる──県北BCPアイデアソン2025最終報告会・オーディエンス賞のチームELM Resortが描く、北茨城の未来
この記事のポイント(1分で分かる)
- 県北BCPアイデアソン2025最終報告会でオーディエンス賞を受賞したチームELM Resortの挑戦を紹介
- 北茨城市で「世界とつながるグローバルハブ」を目指し、外国人ゲストが大きく増加している(※注)と紹介されました
- チーム名:チームELM Resort
- リーダー:ELM On The Beach 代表 Christopher James Woodさん(北茨城市)
- テーマ:『ELMリゾート』をハブにして北茨城市内や県北地域をもっと楽しめるように!
- 本記事の結論:チームELM Resortは、日本人が「当たり前」と思い込んでいた風景を「特別な場所」として再発見し、地域の弱みを強みに変える視点の転換を実践しています。
次年度の参加を検討する方へ:
「うちの地域には何もない」「若い人が来ない」。そんな声を、あなたも聞いたことはありませんか?
人口減少、高齢化、採用難。これらが多くの地域の前に立ちはだかります。しかし、その「何もない」と思われていた場所に、海外からも人が訪れるようになったとしたら、どうでしょうか。
県北BCPアイデアソン2025最終報告会では、そんな逆転の挑戦が発表されました。そのなかでオーディエンス賞を受賞したのが、「北茨城を世界とつながるハブにしたい」と語るチームELM Resortです。ここからは、当日の言葉と具体例をたどりながら、その挑戦の軌跡を追います。

県北BCPで挑む「視点の転換」の仕組みづくり
県北BCPは、県北地域活性化を目指すコミュニティです。業種/職種/年齢/性別/国籍を超えた挑戦者たちが共創することで未来を切り拓く、アイデアソンによるディスカッションを活用した新規事業開発を通じてビジネス関係人口の創出を図るプログラムです。
茨城県県北振興局が主催し、株式会社しびっくぱわーが運営。半年間で事業構想を磨き、最終報告会で発表します。
コロナ禍の出会いから始まった イギリス人が見つけた「特別な」場所
チームELM Resortのリーダー Christopher James Woodさん(以下、クリスさん)が北茨城に出会ったきっかけは、コロナ禍でした。
イギリス出身のクリスさんは、10代でモデルとして来日。その後、飲食マネージャーや幼稚園経営、英語教師、さらには富裕層ドライバーなど、多彩なキャリアを歩んできました。
コロナ禍を機に来日し、北茨城を訪れたときに強く心を動かされたクリスさん。その感動が、次なる挑戦への原動力になりました。
「よし、茨城に世界から人を集めちゃおう!」
チームメンバーでもあり、2022年度のBCPリーダーでもある林さんは、クリスさんの当時の決意をこう紹介しました。一見、突拍子もないアイデア。林さんも「なんちゅうことを考えんでしょうね、この人は」と笑いもまぜながら会場を盛り上げます。しかしクリスさんは本気でした。国道6号沿いの海に面した土地を取得し、リゾート地「ELM On The Beach」の構想を描き始めたのです。

クリスさんが向き合った「3つの壁」
「北茨城は、正直なところ厳しい評価を受けていると感じることもある状況なんです」
クリスさんのチームメンバーは、地域の現状を包み隠さず語りました。
- 人口減少の壁:人口減少率は県平均を上回り、高齢化率は38.5%(参照元:市町村のデータ(北茨城市))に達している
- 魅力発信の壁:住民からは「不便だ」「魅力がない」という声が上がっている
- 採用の壁:リクルートをかけても、なかなか人が集まらない
これは県北地域の多くの企業が直面している現実でもあります。このような壁が、北茨城で事業を始めようとするクリスさんの前に、立ちはだかっていました。

解決アイデア:「視点の転換」で弱みを強みに
これらの課題に対し、クリスさんが実践したのが「視点の転換」です。
「この風景、どう思います? 日本人の私たちにとっては、“おばあちゃんち” みたいな感じですよね。でも、海外の方にとっては “Beautiful!Wonderful!” なんです」
日本人にとっては当たり前すぎて価値を感じにくい風景。古民家、田んぼ、“岸線。しかし、海外からの視点で見れば、それは「どこにでもある風景」ではなく「特別な景色」に変わります。
「不便」と思われていたものが、「特別」に変わる。
この言葉が示すのは、「弱み」を「強み」に変える発想です。クリスさん自身がイギリス出身だからこそ気づけた、外からの目線。その視点の転換を「ELM On The Beach」というカタチで具現化しました。

外国人ゲストの増加 「世界とつながるハブ」の実現に向けて
ELM On The Beachでは、4年前と比べて外国人ゲストが大きく増加しています(※注)。
驚異的な伸び率です。テレビ放送をきっかけに日本人ゲストも増加。国内外から多くの人がELM On The Beachを訪れるようになりました。
さらに印象的なのは、海外から働きに来ているスタッフが増えていることです。地域企業の多くが人手不足に悩む中、グローバルなネットワークを活かした人材確保を実現しており、海外から自発的に人が集まるケースが生まれています。
また、ボランティアとして訪れる人も多いといいます。最終報告会の当日も、海外から働きに来ているスタッフが2名、会場であるNN Shibuya Crossroadsに駆けつけていました。

地域をつなぐ「ハブ」としての展望
ELM On The Beachの役割は、宿泊施設にとどまりません。
袋田の滝、チームラボ 幽谷隠田跡 など、北茨城周辺の観光資源へゲストを送り出す「ハブ」としても機能しています。冬は滝を見に行ったり、夏はマリンスポーツ。宿泊客を地域全体につなげることで、エリア全体の活性化に貢献しています。
「直接的な雇用は生まなくても、間接的な雇用を、北茨城市内でも県内でもつくることができる」
宿泊施設が「目的地」ではなく「入口」になる。そんな新しい地域のカタチが、少しずつ見え始めています。この好循環のモデルは注目を集め、他の地域でも同様の取り組みを始める事業者が出てきているといいます。

「また行きたい」をつくる体験設計
クリスさんが特に意識しているのが、単なる宿泊施設ではなく、「また来たい」と思える体験の設計です。
「ELM On The Beachは北茨城で運営しているんですけど、海と山が近いだけじゃないんです。そこに住んでいる人と一緒に仕事したり、ワークショップを一緒にやってもらったり、いろんなコミュニケーションをつくっていきたいと思っているんです」
訪れた人が地元の暮らしに触れ、一緒に何かをつくる体験ができる場所。それがクリスさんの描く理想です。
「『また来たいな』という想いをつくりたいんです」
プレゼンの最後、クリスさんは会場に呼びかけました。
「皆さん、ELM On The Beach、遊びに来てください」
クラウドファンディングのQRコードを掲げながら、満面の笑顔で応援を呼びかける姿が印象的でした。

まとめ
「挑戦」という言葉は、一人では重すぎても、チームなら軽くなります。
「視点の転換」という言葉は、シンプルでも、実践するのは難しい。
クリスさんが示したのは、外からの目線を取り入れることで、地域の「弱み」が「強み」に変わるという希望でした。
この記事の要点3つ
- 視点の転換:「おばあちゃんち」の風景は、海外の方から見れば「Beautiful!Wonderful!」
- 具体的な成果:インバウンドの増加、海外スタッフの自発的な参加、地域への送客ハブ機能
- 体験設計の哲学:リピーターを生む場づくり
この記事の核心は、地域でも、未完成でも、挑戦は始められるという希望です。
人口減少や高齢化を嘆くのではなく、その土地にしかない価値を見つめ直す。そんな社会が広がれば、日本中に「もうひとつのふるさと」が生まれるかもしれません。
この発表は、最終報告会ではあるものの「完成」ではありません。発表はゴールではなく、次の一歩への「通過点」です。チームELM Resortの挑戦は、これからも続きます。

次の一歩へ
この記事を読んで、心に小さな灯がともったなら。その灯を消さないうちに、次の「小さな一歩」を踏み出してみませんか。
あなたに合う入口から選んでください:
- 県北BCPの概要を見る → 公式ページへ
- 最新のイベント・活動レポートを見る → ニュース一覧へ
- リーダーとして挑戦を検討する → 2025年度の募集情報(参考)
- チームELM Resortの詳細を見る → リーダーページへ
応募しなくても、参加しなくてもいい。「こういう挑戦のかたちもある」と知ること自体が、次の一歩になるかもしれません。
あなたのペースで、あなたらしい挑戦を、どう育てていきますか。
注釈
(※注)外国人ゲストの増加について
施設側の説明による数値です。母数が数名の状態からの推移であり、すべての事業において同様の成果を保証するものではありません。
北茨城市では、近年外国人観光客が大きく増加しています。この状況については、TBS NEWS DIGの特集動画でも紹介されています。
参考動画:
TBS NEWS DIG「外国人観光客数が50.6倍に!北茨城市に観光客が急増したワケは?」 https://www.youtube.com/watch?v=Hjru0AYRu8k
※動画内で紹介されている数値は、北茨城市全体の観光統計に基づくものです。
\やるぜ、県北!みんな、集まれ!/
■ 主催:茨城県(担当:県北振興局)
■ 運営:株式会社しびっくぱわー
■ 共同運営:エヌエヌ生命保険株式会社
■ 後援:日立地区産業支援センター