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地域の技術をECで全国へ──県北BCPアイデアソン2025最終報告会・優秀賞のチームゆかぴょんが描く、常陸太田の未来

この記事のポイント(1分で分かる)

  • 県北BCPアイデアソン2025最終報告会で優秀賞を受賞したチームゆかぴょんの挑戦を紹介
  • 常陸太田市を拠点に、地域の技術とECを掛け合わせた「ALL in 常陸太田」モデルを構想
  • リーダー:いばらきのさち 代表 立石 有香莉さん(常陸太田市)
  • テーマ:茨城の魅力ある商品を全国へ届けたい!ネット販売と共創で育てる地域のファンづくり
  • 本記事の結論:チームゆかぴょんは、ECという武器で地域の技術を全国に届け、「帰っておいでよ。こっちはいいところだよ」そう言える地域をつくろうとしています。

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「地元に帰りたい」——そう思っても、帰れない。都会で働きながら故郷を想う人のなかには、そう感じている人も多いかもしれません。

人口減少で商圏(ビジネスチャンス)が縮小し、担い手も減っていく。地域の産業がこのまま消えてしまうのではないか。そんな危機感は、地方に暮らす人にとっても、都会で働く人にとっても、どこか他人事ではないはずです。

県北BCPアイディアソン2025最終報告会では、そんな状況に向き合う挑戦が、具体的なかたちとしていくつも発表されました。

そのなかで優秀賞を受賞したのが、「帰っておいでよ。こっちはいいところだよ」そう言える地域をつくりたい」と語るチームゆかぴょんです。

ここからは、当日の言葉と具体例をたどりながら、その挑戦の輪郭を追います。


県北BCPで挑む「地域×EC」の仕組みづくり

県北BCPは、県北地域活性化を目指すコミュニティです。

業種・職種・年齢・性別・国籍を超えた挑戦者たちが共創することで未来を切り拓く、アイデアソンによるディスカッションを活用した新規事業開発を通じてビジネス関係人口の創出を図るプログラムです。

茨城県県北振興局が主催し、株式会社しびっくぱわーが運営。半年間で事業構想を磨き、最終報告会で発表します。


移住4カ月で100名以上と対話 ── 70歳社長の言葉が原点に

チームゆかぴょんのリーダーの立石 有香莉さんが常陸太田市に移住したのは、2025年8月末のこと。EC事業で培った知見を地域でいかせないか——そんな思いを抱えていた立石さんは、最終報告会のステージでこう語り始めました。

「2022年に自分の会社を創業しておりまして、ネットショップ1本でやってまいりました。一見すると『なぜそれを?』と驚かれるような、ニッチな商品を扱っておりまして、3年で売上1億円をつくりました」

移住から約4カ月の間に、延べ100名以上の地域の方々と対話を重ね、地域の現状を学び続けてきました。その中で最も心に残ったのは、ある70歳社長の言葉だったといいます。

「僕には東京に息子がいるんだけど、息子の方が稼ぎがいいだろうから…ね。向こうで所帯も持っているし、帰ってこいとも言えなくて」

70歳社長の言葉の背景には、経済的な理由だけではなく、地域の産業構造の変化や担い手不足という複合的な課題があります。人口減少による商圏の縮小や、酒蔵やかぼちゃ農家など、特定の分野では担い手不足が深刻化しているという話も聞いたそうです。

「現状が続けば、こんな風にして地域の産業って消えていってしまうのかな。Web上の誰かの言葉ではなくて、自分の実感として体感した瞬間でした」

一方で、ECで商圏を全国に広げ、届けたい人に届ける。それが、立石さんの「武器」です。


ECで市場の隙間を狙う「4つのステップ」

立石さんがこれまで培った経験を、地域の文脈に合わせて言語化したのが、ECを活用して市場を切り拓く4つのステップです。

 1. リサーチ

「毎日膨大な数の商品を見ている」という立石さん。供給よりも検索ボリュームが多い市場を探します。

 2. 検証

見つけた市場に本当のニーズがあるか、アンケート調査で確かめます。

 3. 商品開発

地域の技術と市場のニーズを掛け合わせて、新しい価値をつくります。

 4. 販売

ECの力を借りて、その価値を全国の顧客へ届けます。

今回着目したのは、ペットロス市場でした。


ペットロスという「隙間市場」── 届けたい人に届く選択肢

チームゆかぴょんがクラウドワークスで実施した独自アンケート調査(ペットを飼ったことがある20〜60代男女100名対象)では、驚きの結果が出ました。ペットとの別れを辛く感じたことがある人は99%、遺毛やお骨を形見として残している人は6割以上、商品への購買意欲は7割以上に達しました。

チームで市場を分析していくと、おもしろいことがわかりました。

「安価な海外製がたくさんあり、一方で高価なオーダー品がちらほらあって。真ん中の価格帯市場が空いてたんですね」

心を込めた商品を届けたい。ペットとの別れを経験した人が、前を向こうとするその瞬間に寄り添える選択肢をつくりたい。そんな思いも抱いています。


「ALL in 常陸太田」── 遺毛ケースキット「Yoriso」の誕生

市場のニーズと地域の技術を掛け合わせる。立石さんがコラボレーション先に選んだのは、繊細な革の加工技術を持つ株式会社小泉製作所茨城県北工場(常陸太田市)でした。

「ペットを亡くして、前を向こうとするその瞬間。AIが書いたような機械的な絵じゃなくて、人が書いた温かみのあるアナログの柄がいいと思ったんです。なので、自分で描いてみました」

本革製の遺毛ケースに、オーダーメイドの手書き彫刻を加えました。中学・高校の部活でもらったお守りのような、人の手のぬくもりが伝わるもの。ペットの名前や命日、柄などを一つひとつ手書きで彫刻します。

生産体制も特徴的です。常陸太田市の工場で革製品を製作し、常陸太田市でオーダーを受けての手書き彫刻、そして発送まで——主な工程を常陸太田で完結させています。

「ALL in 常陸太田です!」

立石さんはステージでそう語りました。将来的には、手書き彫刻のトレーニングを受けた「常陸太田クリエイターズ」を結成し、地域の仲間と一緒に届けていきたいといいます。

最終報告会では、完成した商品「Yoriso」を披露。2026年1月から販売を開始しています。


1年で1億円の先に描く未来

会社としての目標は、1年で売上1億円を目指すこと。

「売上100万円の商品を10個つくれば1カ月で1,000万。12カ月で1億、という大きな目標を掲げています」

革製品にとどまらず、木など地域のさまざまな資源とコラボレーションを広げていく構想も描いています。将来のクリエイターズへの還元も構想しています。

しかし、立石さんが見据える未来は、お金だけではありません。

地域の商品や技術が日本全国のお客様に愛されて、地域からどんどん新しいものが生まれて、みんなが生き生きと働いている。

そんな地域になれば、原点となった70歳の社長も「帰ってこいって言えない」なんて言わないはず。立石さんは最終報告会の締めくくりに、こう語りました。

「『帰っておいでよ。こっちはいいところだよ』そう言える。そんな未来に向かって進んでいきたいと思います」


まとめ

「挑戦」という言葉は、一人では重すぎても、チームなら軽くなります。

地域の技術は、届け方次第で全国に届く。

立石さんがECで培った「4つのステップ」は、常陸太田の技術を編み合わせ、ペットロスという隙間市場に新しい選択肢を生み出していました。

この記事の要点3つ

  • ECで隙間を狙う:リサーチ→検証→商品開発→販売の4ステップで、届けたい人に届ける
  • ALL in 常陸太田:常陸太田の技術を掛け合わせた地域完結型の生産体制
  • 70歳社長への答え:「帰っておいでよ。こっちはいいところだよ」そう言える地域をつくる

この記事の核心は、地域でも、未完成でも、挑戦は始められるという希望です。

移住約4カ月で見つけた地域の課題と技術。ECという武器で、立石さんの挑戦は始まったばかりです。


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