新規事業はつくれなかった。でも”大切な土台”を手に入れた──県北BCPアイデアソン2025最終報告会・チームHUNTER✕KINGが見つけた、経営と人生の軸
この記事のポイント(1分で分かる)
- 県北BCPアイデアソン2025最終報告会で発表したチームHUNTER✕KINGの挑戦を紹介
- 高萩市で害獣駆除事業を営む経営者が、半年間で「新規事業の手前にある大切なこと」を見つけた記録
- チーム名:チームHUNTER✕KING
- 母体企業:株式会社HUNTER✕KING(高萩市)
- テーマ:日本一のプロハンター企業へ!登録20万人超YouTube『サバイバルキング』をビジネス最強の剣に
- 本記事の結論:チームHUNTER✕KINGは、新規事業をつくることはできなかった。しかし、何のために生き、何のために経営するのかという人生と経営の”土台”を持ち帰りました
次年度の参加を検討する方へ:
「やりたい事業が見つからない」。
経営者として走り続けていると、ふとそんな感覚に襲われることがあるかもしれません。目の前の仕事は回っている。売上もある。そんな中、今後の成長のためにも新しい事業を考えたいが、何がやりたいのか分からない。そんな焦りを、口にできずに抱えている経営者もいるかもしれません。
県北BCPアイデアソン2025最終報告会では、半年間の新規事業開発プログラムを経た挑戦がいくつも発表されました。そのなかに、「新規事業はつくれなかった」と正直に語るチームがありました。チームHUNTER✕KINGです。ここからは、当日の言葉をたどりながら、チームHUNTER✕KINGが半年間で見つけたものの輪郭を追います。

県北BCPで挑む──半年間の新規事業開発プログラム
県北BCPは、県北地域活性化を目指すコミュニティです。業種/職種/年齢/性別/国籍を超えた挑戦者たちが共創することで未来を切り拓く、アイデアソンによるディスカッションを活用した新規事業開発を通じてビジネス関係人口の創出を図るプログラムです。
茨城県県北振興局が主催し、株式会社しびっくぱわーが運営。半年間で事業構想を磨き、最終報告会で発表します。
高萩市の害獣駆除会社 代表が、BCPの壇上で語ったこと
チームHUNTER✕KINGのリーダー 阿部 雄太さんは、茨城県高萩市で害獣駆除事業を営む株式会社HUNTER✕KINGの代表取締役。住宅向けの害獣駆除を中心に、行政向けの野生動物対策事業やYouTubeなどのメディア事業を手がけてきました。
最終報告会の壇上で、阿部さんはこう切り出しました。
「僕は、結果としてこの半年間で新しい事業のかたちを見つけることはできませんでした。でもその新規事業開発の手前にある大切なことに、この半年間で気づくことができました」
新しいビジネスの話ではなく、自分自身と向き合い続けた半年間の記録。阿部さんが語ったのは、経営者としての”土台”をつくり直す物語でした。

「やりたいことがない」──第1回BCPで突きつけられた現実
阿部さんが最初の壁にぶつかったのは、県北BCPの第1回でした。
「他のリーダーたちはやりたい新規事業がはっきりあって、その事業をかたちにするためにこの場に来ている。でも自分だけは違いました。やりたいことがない。新規事業に対する想いもない」
周囲のリーダーたちがそれぞれの事業構想を語る中で、阿部さんは強烈な違和感を覚えたといいます。違和感の正体は明確でした。
「僕には新規事業をするための土台がつくれていなくて、そもそものスタートラインに立てていない」
阿部さんが言う土台とは、何のために生きているのか、何のために経営しているのかという、人生と会社の目的のことです。
しかし、いざ考えようとしても日々の業務に追われ、思考する時間がまったく確保できません。阿部さんは、ある大きな意思決定をしました。

事業を減らしたら、売上が増えた──経営者の仕事は「思考すること」
「僕たちのメイン事業である住宅向けの害獣駆除だけを残し、それ以外の行政向けの野生動物対策事業やYouTubeなどのメディア事業を撤退する判断をしました。事業を増やすのではなく事業を減らすという判断です」
新規事業開発のプログラムに参加しているのに、事業を減らす。一見すると矛盾に思えるこの決断には、明確な目的がありました。自分たちの人生とビジネスについて本気で考える時間をつくるためです。
すると、予想外のことが起きました。使う時間と労力は減ったはずなのに売上と利益が増えました。阿部さんはこの結果から、ひとつの確信を持ちます。
「経営者にとって最も重要な仕事は、現場で手を動かすことではなく考えること、思考するということです」
事業を減らすという逆転の判断が、阿部さんにとって大きな財産になりました。
考える時間を手に入れた阿部さんは、第4回の中間発表で自信を持って発表に臨みます。「正直これでいけると思っていた」。ところが発表を終え、将来の自分を想像したときに「やっぱりなんか違うかもしれない」と感じます。あれだけ考えて、事業も減らして、それでもたどり着けなかった——。阿部さんにとって、かなりのショックだったといいます。

経営者としてのメッキをとっ払って、たどり着いた答え
阿部さんは、目的にたどり着く方法を探しに動き始めました。起業前から接点のあった信頼できる経営者に話を聞きに行ったり、経営者向けの研修やセミナーにも参加したりしました。研修やセミナーで学んだのは、目的にたどり着くためにはある種の技術が必要だということ。そして話を聞く中で、共通していたことがありました。
「それは自分の弱さを理解し、ありのままの自分を受け入れることでした」
阿部さんは、それまで「こうありたい自分」や「世間的に価値があると思われたい自分」を本当の自分だと勘違いしていたといいます。
「強く見せるために自分にメッキを張りまくっていました。でもそれを全部とっ払って、俺って本当はこうだよなと自分を認めてあげることが大事なんだと気づきました」
同時に、物事の本質を捉えることの重要性にも気づきました。分からなければ分かるまで追求する——その姿勢を、普段の生活から繰り返していきました。

「仲間を幸せにしたい。それが僕の本質でした」
人生についてもう一度考え直した阿部さんが、ようやくたどり着いた結論がありました。
「自分の本質を追求していくと出てきたのは仲間に対する愛情です。僕はまだ成功者でもないし人としても不完全です」
不完全な自分を認めたとき、仲間がとてつもなく尊い存在に見えた。無償の愛をくれる家族、何もない自分に協力してくれる仕事関係の人たち、サービスを支えてくれるお客様——阿部さんは、その存在に本当の意味で感謝できるようになったと語ります。
「仲間がいなければ僕1人で成功しても何もおもしろくない。家族が不幸だったら守れない自分が嫌になる。仕事関係の人やお客様に関わって損したと言われる人生は耐えられない。だから僕は自分が気持ちよく生きるために周りの人たちを幸せにしたい。それが僕の本質でした」
これは誰かのために我慢する話ではなく、完全に自分軸の話だと阿部さんは語ります。仲間、家族、仕事の関係者、お客様を大切にし、幸せにすること。BCPに参加して、目的にたどり着けたことが最高の財産になったと話しました。

大切な通過点となった最終報告会
「結果として新規事業をつくることはできませんでしたが、人生と経営の核を持ち帰ることができました。これから僕はこの目的を軸に会社も事業も改めてつくっていきます」
新規事業開発プログラムで「新規事業はつくれなかった」と正直に語る。けれど、「何のために」を見つけたこと自体が、これからの事業づくりの出発点になる。阿部さんの発表は、最終報告会が”ゴール”ではなく、地域で挑戦が続いていくための通過点であることを体現していました。
最後に阿部さんは、チームのメンバー、しびっくぱわー、県北振興局への感謝を述べるとともに、こう語って発表を締めくくりました。
「申し訳なかったともものすごく思ってます。僕にいろいろアイデアをくれた皆様に謝罪と感謝を申し上げたいと思います」

まとめ
「挑戦」という言葉は、一人では重すぎても、チームなら軽くなります。
チームHUNTER✕KINGが県北BCPで見つけたのは、事業プランではなく、経営者としての”土台”そのものでした。
この記事の要点3つ
- 土台がなければ始められない:「やりたいことがない」と気づいたことが、半年間の出発点になった
- 減らすことで見えるものがある:事業を減らし、考える時間を確保した結果、売上と利益が増えた
- 不完全な自分を認めることが、経営の核になる:経営者としてのメッキを剥がし、仲間・家族・関係者を幸せにするという人生の目的にたどり着いた
この記事の核心は、地域でも、未完成でも、挑戦は始められるという希望です。
「やりたいことがない」「アイデアがない」——そのような状態からでも、半年間の挑戦で人生と経営の核に出会える。阿部さんの発表は、完成していなくても立てる場所があることを示していました。

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■ 主催:茨城県(担当:県北振興局)
■ 運営:株式会社しびっくぱわー
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