「地域の便利屋」から「人生の伴走者」へ。県北BCPアイデアソン2025最終報告会・審査員特別賞(パブリックマインド賞)チームGood Last Lifeが描く、日立・坂下地区の未来
この記事のポイント(1分で分かる)
- 県北BCPアイデアソン2025最終報告会で審査員特別賞(パブリックマインド賞)を受賞したチームGood Last Lifeの挑戦を紹介
- 日立市坂下地区で20年以上、高齢者の見守りと生活支援を続けるNPO法人ふれあい坂下の事業転換への道のり
- リーダー:NPO法人ふれあい坂下 代表理事 川﨑眞理子さん(日立市)
- テーマ:在宅セフティネット事業「転ばぬ先の杖」——健康から看取り・終活まで、暮らしに寄り添う包括支援
- 本記事の結論:専門家の指摘をきっかけに、見守りサービス「ケアびー」や住民座談会など複数の手段を組み合わせた新しい試みに取り組み始めました
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「遠くで暮らす親のことが、ずっと気がかりで…」——そんな思いを抱えていませんか。
帰省のたびに身体が弱くなっていく親を見ると胸が痛む。けれど、何から手をつければよいのかわからない。親の暮らしへの不安は、多くの家庭で身近なテーマになりつつあります。
県北BCPアイデアソン2025最終報告会では、そんな不安の先にある挑戦が発表されました。「住み慣れた地域で安心して暮らせるようにしたい」と語ったのが、チームGood Last Lifeです。ここからは、当日の言葉をたどりながら、高齢者見守りの「次のかたち」を追います。

県北BCPで挑む「在宅セフティネット」への転換
県北BCPは、県北地域の活性化を目的とした半年間の事業構想支援プログラムです。業種・職種・年齢・性別・国籍を超えた挑戦者が集まり、アイデアソンを通じて新規事業を構想します。半年間の伴走で、ビジネス関係人口の創出を目指すプログラムです。
茨城県県北振興局が主催し、株式会社しびっくぱわーが運営。半年間で事業構想を磨き、最終報告会で発表します。
「地域の困りごと」に応え続けた約20年
チームGood Last Lifeのリーダー、川﨑眞理子さんが高齢者支援を始めたきっかけは、地域の声でした。
日立市坂下地区は顔が見える関係が残る一方、学校の統合が進み、移動の選択肢が限られやすい状況もあるといいます。
川﨑さんは最終報告会のステージで、まず会場にこう問いかけました。
「10年後の自分を考えてみてください」
高齢社会のなかで、自分自身やその親が安心して暮らしていけるのか。多くの人にとって、人ごとではない問いです。
NPO法人ふれあい坂下は2002年に設立。掲げる理念は「生涯自立・人権尊重・相互協働」。公的な制度だけでは届かない願いに応えるために、活動を開始しました。
法人設立後、日立市と配食サービスの委託契約を締結。家事支援、福祉有償運送、子育て支援、さらには2カ所の子ども食堂も運営しています。「地域の困りごと」に応え続けた積み重ねが、現在の組織を支えています。

直面した「便利屋になってしまっている」という壁
「あなたたち、地域の便利屋さんになってしまっているよね」
事業づくりの視点から寄せられたこのフィードバックが、NPOのあり方を問い直すきっかけになったといいます。幅広い依頼に応えるほど、組織としての継続性が揺らぐ。そのジレンマが表面化したような言葉でした。
これは20年以上の活動を否定するものではなく、この先も活動を続けるための「持続可能性」に関わる問いかけでした。発表では、次のような課題が挙げられています。
- 持続可能性の壁:制度上の報酬体系に制約があるなかで「何でも屋」になってしまっており、経営の見通しが立たない
- 孤立化の壁:地域において高齢化と人口減少が同時に進行。さらに、公共交通の縮小で孤立が深まりつつある
- 認知の壁:在宅セフティネットの価値を、住民や行政にどう伝えるか
「持続可能な経営しないと、先はないよ」
専門家からのこの言葉が、「地域の便利屋」から「在宅セフティネット事業」への意識転換を促したと、川﨑さんは振り返ります。
「セーフティーネット」に変えるために——安否確認の仕組みづくり
川﨑さんが打ち出したのが、安否確認を軸にした包括支援の仕組みでした。
①人が訪ねて気づく
②生活支援のなかで異変に気づく
③機器でつながりやすくする
見守りについて、家族がすべて担うか、機器に任せるかの二択ではなく、複数の手段を重ねるという考え方に基づいています。
ふれあい坂下の具体的な手段は、訪問、配食、そしてIT機器の操作が難しい高齢者や認知症の方でも、家族や支援者と簡単につながることができる遠隔操作機能付きのコミュニケーションタブレット(シニア向けテレビ電話)「ケアびー(Carebee)の3つです。
川﨑さんはこの取り組みを「在宅セフティネット事業」と表現しています。
健康なうちから緩やかな見守りを始め、身体機能が低下すれば配食や家事支援へ。「ケアびー」のように操作負担を減らすことができるように設計されたツールで、家族や支援者がつながりやすくする。
さらに、看取りや終末期の相談では、必要に応じて行政や士業とも連携しながら相談先を整理する役割も視野に入れています。

BCPで磨いた「座談会」という場づくり
こうした在宅セフティネットの認知を広げるために、ふれあい坂下が取り組んだのが住民向けの座談会でした。しかし川﨑さんは「どう進めていいかわからなかった」と正直に語ります。
BCPの半年間で得たアイデアが、座談会のカタチを変えていきました。
- チラシのデザイン刷新
- クイズ形式の導入で参加者の関心を引く
- 参加者を小グループに分けるワンテーブル方式
- スタッフも輪に加わる対等な対話
- お茶と茶菓子でリラックスした雰囲気づくり
ひとつひとつは小さな工夫ですが、場の質を大きく変えました。
日立市の交流センターで計3回実施。回を重ねるごとに参加者からの質問が増え、行政やケアマネジャーからも評価を得たといいます。川﨑さんは手応えを感じながら、座談会を「内容の濃い”転ばぬ先の杖”講座」へと進化させています。

「住民のそれぞれの力もすごく大事」——支え合いの先にある未来
ピッチの終盤、同チームのメンバーはこう語りました。
「超高齢社会・少子化に対応していくには、住民のそれぞれの力もすごく大事。それをなんとか活性化していこうという思いで進めています」
支える側と支えられる側を固定せず、一人ひとりの力をいかしあう。ふれあい坂下が築いてきた信頼と、BCPで得た新しい手法が交わるとき、坂下地区の見守りが次の段階へ進もうとする意志が、発表からうかがえました。

まとめ
「挑戦」という言葉は、一人では重すぎても、チームなら軽くなります。
「便利屋」と指摘されたことは、これまでの活動に対する否定ではなく問い直しでした。20年以上、地域の声に応え続けてきたからこそ、次のカタチを模索し始めています。完璧な仕組みはすぐにはできません。それでも、目の前の「困りごと」に応え続けることが、結果として地域のセーフティーネットになっていく。川﨑さんの挑戦は、そのことを示しています。
この記事の要点3つ
- 20年以上の積み重ね:小さく始まった活動が、配食・子ども食堂・福祉有償運送と広がり、地域の土台になった
- 支援のカタチを「組み直す」:見守りサービス「ケアびー」や住民座談会など複数の手段を組み合わせ、在宅セフティネット事業へ舵を切った
- 「在宅セフティネット」の構想:健康から看取りまで、暮らしの各段階に寄り添う包括支援を目指す。40〜50代・企業への展開も視野に
この記事の核心は、地域でも、未完成でも、挑戦は始められるという希望です。
日立・坂下地区に、ふれあい坂下が取り組む持続可能性を意識した見守りの仕組みという新たな選択肢が加わろうとしています。制度や資金面の工夫に加え、人のつながりが推進力になることが、この発表から伝わってきました。

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■ 主催:茨城県(担当:県北振興局)
■ 運営:株式会社しびっくぱわー
■ 共同運営:エヌエヌ生命保険株式会社
■ 後援:日立地区産業支援センター