スクール受講生特集 vol.10|後藤 大樹さん
12/17(日)に開催した県北Business Start Schoolの集大成「最終プレゼンテーション」に登壇された後藤 大樹さんをご紹介します。
このスクール受講生特集では、最終プレゼンテーションに登壇した10名のスクール受講生の活動実績を、おひとりずつ紹介します。今回は、後藤 大樹さんによる『築50年の実家をDIY民泊化 泊まれる「実家活用モデルハウス」でUターン支援』です。
*12/17(日)最終プレゼンテーションの様子については、こちらの記事をご覧ください。
空き家は「活かすべき資源」
今日は、皆さんの周囲にある空き家やご自身の実家を見る目が少し変わればいいなという気持ちでお話しします。「8,460,000」という数字が何を意味しているかをご存じの方はいらっしゃいますか。これは、全国にある空き家の数です。現在、10軒の住宅のうち1軒が空き家になっています。この割合は10年後には3倍になり、3軒に1軒が空き家になると言われています。インフレで住宅価格が高騰していく中で、古い家を「活かすべき資源」として活用し、空き家を増やさないことが重要です。
私は常陸大宮市に住んでいます。大学卒業後に上京し、15年ほどIT業界で働いていましたが、一念発起し辞職しました。職業訓練校に通い、住まいの領域へ飛び込みました。2023年4月にUターンする形で茨城県北地域おこし協力隊【起業・複業型】のKENPOKU PROJECT E(以下、PROJECT E)の一員となり、県北地域でリフォーム事業をしています。
このような決断に至ったきっかけは、父の死でした。我が家には事業で抱えた借金があり「これではまずい」と上京後は一生懸命働いていました。その反面、実家から足が遠のき、次第に心の距離も離れていきました。このような日々の中で、父が亡くなったのは突然の出来事でした。残ったものは、親子で思い出づくりができなかった後悔と、当時の私にとっては疎遠になった土地に建てられた築50年の空き家でした。
親子の交流を生み、実家の未来を共に作り上げる
私の実家のようなケースは県北地域だけではなく、他の地方都市でも多発しています。このような状況に陥らないための仕組みをつくりたいと考え、PROJECT Eに応募しました。PROJECT Eの任期中に、DIYをきっかけに親子の交流を生み、実家の未来を共に作り上げるリフォーム支援を事業化したいと思っています。
リフォーム支援事業では、県北地域にルーツがある方に対して、プレ相続を兼ねた実家の利活用の伴走支援を行います。この取り組みでは、ご両親がご健在なうちにできる親子の思い出づくりと、上京した子のUターンの土台づくりを行います。そのためにも私は論より証拠ということで、まずは「自分の実家をDIYで民泊化してみよう」と思いました。
泊まれる&つくれる「実家ビフォーアフター」
私の事業のコンセプトは、泊まれる&つくれる「実家ビフォーアフター」です。キーワードは「民泊 × 工房 × モデルハウス」です。私がリノベーションした空間を通してご自身の実家に目を向けてもらう機会を提供します。
私の実家のリノベーションの進捗と今後の計画についてお話しします。私の実家は、祖父が建てた築52年の木造の平屋です。広さは113㎡、5DKです。トイレは汲み取り式という古い作りでしたが、DIYで簡易水洗にしました。
今後の作業として、居間はビフォーの状態を感じてもらうために敢えて実家の雰囲気を出し、必要以上に手を加えません。仏間と奥の間は一間に統合し、客室として仕上げる予定です。和をベースに、北欧との折衷スタイルを目指しています。書斎には、ジグザグの天井などの父のこだわりが残っています。書斎は、父が趣味の映像や音響を楽しむためにリフォーム済みなのですが、先日雨漏りで破れてしまいました!しかし、縁があって夏に本格的なリビングシアターの施工を経験をすることができました。そのノウハウと父の想いを継いで、書斎をバージョンアップする予定です。
また、実家には農業用の蔵があります。蔵は作業をしたり、DIY研修を行うための工房として整えます。さらに、エリアを拡大して、寝室はランドリールームへリノベーションします。ランドリールームは脱衣所も兼ねるため、壁を変更して浴室と接続できるようにします。
現状はボロボロな浴室ですが、私はリノベーションできると思っています。その理由は、2023年秋に在来浴室と言われる昔ながらの工法で施工された浴室のリフォームを経験したからです。
私は、実家のリノベーションではテイストをひとつに統一しません。私個人の妄想の中には「農業用の蔵の一部をサウナにする」というものがあります。このような妄想をツギハギでまとめ、リノベーションで形にします。私の実家を「どんなことでもできるDIY可能物件」として見立てていきます。
最終的な場づくりの目的としては以下の通りです。
・訪れた人が「自分の実家がこうなったらいいな」というイメージを持てるようになる
・職業訓練校で学んだリフォームの知識や体系的な学びを共有できる
・会社というレールを外れライフシフトした経験から、壁打ちの機会を提供する
このような体験を通して「実家が負の遺産からお宝に見えてしまう」場づくりを行います。
Exploring KENPOKU!!で見えてきたもの
「実家リフォームによるUターン支援事業」へと繋げる上で大きな鍵となるのが「学びの場」の機能です。Exploring KENPOKU!!としての体験をひとつお話しします。2023年11月から約1ヶ月半の間、私は大子町の移住者のリフォームを手伝っていました。その移住者の方は、空き家バンクで取得した戸建ての修繕見積もりが予想外に高く、困っていました。あちこちに相談した結果、大子町で設計・施工を請け負っているPROJECT E卒業生の中村さんを紹介され、私も一緒にリフォームを手伝うことになりました。セミプロの立場だからこそ、親身かつ誠実に取り組むことができ、移住者の心細い気持ちに寄り添う施工ができたのではと思っています。この体験から、消費者の目線に近いセミプロが市場に求められているケースは多いのではと感じました。
一緒に古い実家を再生し、新たな物語を紡いで地域を盛り上げる
Uターンをして実家に戻り、再び県北地域に関わるようになって改めて感じることがあります。それは、地域の未来が見えないと、今回の県北Business Start Schoolの集大成「最終プレゼンテーション」に登壇しているような魅力的なプレーヤーは集まらないし、そもそも実家を生かそうとUターンする方は現れないということです。だからこそ私が思うことは、空き家資源を活用できる人材を育成し、ネットワーク化する事で場づくりは加速するということです。場づくりが加速すれば、地域の魅力と人の流れが生まれます。人の流れが生まれると、空き家の増加が抑制できます。あるデータによると、2023年のリフォーム市場規模は7.4兆円と言われています。リフォーム市場はこれからも規模の拡大が見込まれます。
中小規模の工事は大手企業で通用するような経済合理性では割り切れない部分も多いため、小規模事業者の活躍が期待されています。私もずっとITに携わっていましたが、ここ1年間のAIの台頭で、中途半端なホワイトカラーの仕事よりブルーカラーの仕事の方が未来があると感じます。「リフォーム大工をAIが担うには数十年ほどかかるのでは?」という見方もあります。だからこそ、私は提案します。「どうせAIに淘汰されるなら、みんなでUターンして兼業のリフォーム大工になろう!」AIにはできない私たちだけの特別なミッションは「一緒に古い実家を再生し、新たな物語を紡いで地域を盛り上げること」だと思います。このミッションを胸に、2024年夏の民泊オープンを目指して実家のリフォームを頑張っていきます。
県北BSS最終プレゼンテーション受賞者が登壇します!
県北地域のネットワークをさらに広げるためのイベント『県北BCPセミナー編vol.6「新規事業開発と新規起業が生み出す県北イノベーション」』にて、茨城県知事賞を受賞された松井さんと優秀賞を受賞された齋藤さんがピッチを行います。
キーノートでは株式会社imaの三浦 亜美さんをお招きし「新規事業開発や新規起業におけるコラボレーションの重要性」についてお話しいただきます。合同ピッチでは、県北BCPアイデアソン最終報告会受賞者と県北BSS最終プレゼンテーション受賞者からのピッチを実施し、県北地域でスタートした新しい取り組みについてお話しいただきます。イベントの最後には交流会を実施し、県北地域での広いつながりとコラボレーションを生み出す機会をつくります。
県北地域の活動に少しでも興味のある方は、新たなつながりとアイデアを求めて、ぜひご参加ください!
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