スクール受講生特集 vol.9|神田 駿介さん
12/17(日)に開催した県北Business Start Schoolの集大成「最終プレゼンテーション」に登壇された神田 駿介さんをご紹介します。
このスクール受講生特集では、最終プレゼンテーションに登壇した10名のスクール受講生の活動実績を、おひとりずつ紹介します。今回は、神田 駿介さんによる『森づくりから始まる豊かなまちづくり ~放置された森林から生まれる新たな可能性~』です。
*12/17(日)最終プレゼンテーションの様子については、こちらの記事をご覧ください。
「再造林施業」と「自伐型林業」
皆さんは自伐型林業をご存知でしょうか。自伐型林業とは、採算性と環境保全を高い次元で両立する持続的な森林経営のことです。木を全て切るのではなく、間伐を繰り返しながら100~150年続く森へと育てることで採算を取ることができます。同じ場所での施業が可能となるため、移住・定住の支援策や獣害対策、災害防止対策、温暖化対策などと様々な効果を発揮します。このプレゼンテーションでは、自伐型林業と現行林業との違いをお伝えした上で、僕の事業の展望についてお話しします。
現在行われてる一般的な林業は「再造林施業」と呼ばれています。概ね50年を目処に木を全て切り、余裕があれば木を切ったところに植林や再造林を行います。一方「自伐型林業」は多間伐施業と呼ばれ、間伐を繰り返し森を育てていく林業です。ふたつを対比しながら説明します。
■ 再造林施業の課題
・初期費用が高額
大規模化が進み大きな機械を使う必要がある
・環境問題
木を全て切ってしまうため土砂災害を誘発している
・高額補助金への依存
木の値段の下落によって採算が合わない
■ 自伐型林業の特徴
・小額で始めることができる
小さな機械で小さな道をつくることができる
・土砂災害の防止
小さな道を高密につけることで土砂災害を防ぐことができる
・自立した経営ができる
工夫次第で様々なライフスタイルとの共生が可能
日本の森林の現状
次に、日本の森林の現状についてお話しします。日本では森林問題が深刻化しています。現行の林業では、林業の担い手不足に伴い放置された山林が増えています。森林が本来持つ多面的な機能が失われています。貨幣評価できるものでも、年間70兆円ほどの損害が出ていると言われています。
このような状況の中で、国としても持続可能な社会の実現に向けて、森林問題解決に力を入れています。例えば、2019年度から環境譲与税の導入が始まりました。また、生物多様性の損失を食い止め回復させるというゴールに向け、2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することの達成を目指す目標(30 by 30)への取り組みを実施しています。更に、カーボンニュートラルへの取り組みも行っています。
このような背景から自伐型林業が非常に注目を浴びています。自伐型林業の環境保全性の高さを証明したふたつの実績は次の通りです。
カーボンニュートラルに有効である:栃木県の自伐型林業者がJ-クレジット制度の認証を受ける
生物多様性保全にも効果がある:徳島県の自伐型林業者が環境省が進めるOECMの認定を受ける
また、自伐型林業は地方創生の鍵として非常に期待されています。理由は、地方への移住者を増やし新規の林業者を生むことができるからです。僕はこの自伐型林業を日立市を拠点に県北地域へ、そして茨城県へと広げていきます。
僕が行う事業の目的は、自伐型林業の普及による移住定住者の増加と、放置された森林資源の有効活用による豊かな街づくりです。この目的を達成するために行うふたつの事業内容についてお話しします。
森林保全事業(Revitalize)
■ 自伐型林業
森林を管理できない山主から施業委託を受け、森林保全を行います。その際に出た間伐材や薪などを販売し、その一部を収益として山主に還元していくことで、さらなる森林の確保に繋げていきます。
■ 林業と移住体験施設の提供
日立市内にある空き家や廃校を有効活用し、仕事と移住の両方を体験できる場を作ります。全国的にも移住体験や田舎暮らしができる場所は沢山ありますが、移住をする上で重要なのは仕事があるかどうかという点だと僕は思っています。そこで、仕事と移住の両方を体験できる場を作り、移住者と林業者を増やします。
■ 林業と間伐材を有効活用した新商品の開発
日立市のシンボルは桜の木です。日立市には街路樹をはじめ、山にもたくさんの桜が植えられています。特にメイン通りにある桜並木は植え替えの時期に来ているため、これを有効活用して地元産の樹木アロマの製造と販売を考えています。
森林を使ったアクティビティ事業(Play)
■ アウトドア研修
現在、自然の中で行うアウトドア研修が非常に注目を集めているため、都心部の企業を対象にアウトドア研修事業を行います。都心部から日立市内に人を呼び込みます。研修場所は、整備した森林を有効に活用します。研修内容は、林業体験や焚き火トーク、チームビルディングなどです。また、研修に来ていただいた企業に森林保全をCSR活動として提案します。CSRに取り組む企業や検討中である企業の数は非常に増えています。特に、都心部では周囲に自然環境が少ないため、その企業の状況に合わせたCSR活動を提案することで、単発的な関係から継続的な関係の構築を目指します。
■ イベント企画
森林資源を有効活用してイベントを企画します。イベントの内容は、森林セラピーや森林教室、トレイルランなどを予定しています。地域のみなさんに森林に親しんでもらえる企画を実施します。
これまでの取り組みと今後の展望
現在僕は約6.5haほどの山林を確保しています。また、日立市と自伐型林業推進協会と連携し制度作りを進めています。2024年3月には自伐型林業フォーラムを開催する予定です。また、僕は自伐型林業の知識と技術の習得を進めるため長期研修に参加しています。さらに、空き家の確保や廃校の活用などについても話を進めています。実際に竹林の整備を行い、竹を使ったイベントの開催なども行っています。
2027年までに200ha以上の森林を確保し森林保全を進め、20人以上の自伐型林業者を輩出していきます。そして、自社でJ-クレジット制度の認証を受け、茨城県で初となる環境省の「体験の機会の場」認定の取得を目指していきます。
県北BSS最終プレゼンテーション受賞者が登壇します!
県北地域のネットワークをさらに広げるためのイベント『県北BCPセミナー編vol.6「新規事業開発と新規起業が生み出す県北イノベーション」』にて、茨城県知事賞を受賞された松井さんと優秀賞を受賞された齋藤さんがピッチを行います。
キーノートでは株式会社imaの三浦 亜美さんをお招きし「新規事業開発や新規起業におけるコラボレーションの重要性」についてお話しいただきます。合同ピッチでは、県北BCPアイデアソン最終報告会受賞者と県北BSS最終プレゼンテーション受賞者からのピッチを実施し、県北地域でスタートした新しい取り組みについてお話しいただきます。イベントの最後には交流会を実施し、県北地域での広いつながりとコラボレーションを生み出す機会をつくります。
県北地域の活動に少しでも興味のある方は、新たなつながりとアイデアを求めて、ぜひご参加ください!
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