スクール受講生特集 vol.8|的場 悠人さん
12/17(日)に開催した県北Business Start Schoolの集大成「最終プレゼンテーション」に登壇された的場 悠人さんをご紹介します。
このスクール受講生特集では、最終プレゼンテーションに登壇した10名のスクール受講生の活動実績を、おひとりずつ紹介します。今回は、的場 悠人さんによる『里山で哲学する場を創る』です。
*12/17(日)最終プレゼンテーションの様子については、こちらの記事をご覧ください。
今日は、僕が「里山で哲学する場を創る」ことが何の事業になっているのかについてお話しします。2022年に茨城県北地域おこし協力隊【起業・複業型】のKENPOKU PROJECT E(以下、PROJECT E)として着任し、現在2年目です。19歳からヨガ講師をやっているので、2023年でヨガ講師歴は7年目です。
プレゼンテーションのタイトルに「哲学」とありますが、僕の場合は本を読んでじっと考えることよりも、体を使って自分の状態を積極的に変化させていくことが「哲学」だと思っています。その延長に環境をまるごと変えるための試みを行っています。僕は築150年を超える茅葺き屋根の古民家に住みながら、ヨガ教室を定期的に開催することで古民家を事業に活用しています。古民家でのヨガ教室は2022年11月から継続しています。
「健全なバランス」とは?
僕は大学を卒業後、1年半ほど都内の出版社に勤めていました。会社員として働いた時期は、コロナ禍と重なっていました。この時期に僕が感じたことを、2階建ての建物に例えてお話しします。僕の感覚では、人間社会全体の基盤が建物の1階で、社会生活は建物の2階だと考えています。コロナ禍では、人間社会全体がグラグラとした基盤に乗っているように感じました。1階の存続自体がそもそも危機的状況だと思いました。危機的状況の具体例としては、環境破壊が急速に進み生活基盤が軽視されていたり、身体を壊す人が多いということです。そんな状況であるにも関わらず、世の中では2階の話ばかりしていると感じていました。このような状況の中で「健全な1階とは何だろう」と考えました。寝不足や身体のどこかに痛みがある状態で「これがやりたいんです」という方がいますが、僕はヨガ講師として「それはちょっと違うかな」と感じています。その理由は「何かやりたいことがあるなら、まずはちゃんと寝て身体をくつろがせてからやった方がいい」と考えているからです。
社会全体の在り方に対しても同じことが言えると思っています。自然環境は、社会の様々な仕事を生み出す基盤です。僕は、自然環境を保全していくためにもっと時間を傾けなければいけないと思っています。しかし、建物で言う1階部分である自然環境への取り組みは、市場では評価されにくいと思っています。
PROJECT Eとしての「利」の定義
このような環境において、PROJECT Eのメンバーである自分ができることは何かを考えました。「起業・複業型」なので利益を追求することは前提としてあります。その利益の「利」という言葉を自分なりに定義すればいいのだと考えました。僕にとっての「利」の定義は、PROJECT Eとしての行動の結果が、自分の生活を支えてくれる何かしらの経済的物資や心の支えになるものに変わることです。行動の結果が直接的なお金に変わらなくても良いと思っています。その理由は、地域に根差したPROJECT Eならではの「利」があるからです。地域の方との繋がりで畑を手伝いながら、直接的に自分の生活に必要な物資を手に入れることができます。
サトヤマ的起業のあり方
僕が実際にどのように事業をしているかをお話しします。週の半分は直接的な収益につながらない「結」と呼ばれる相互扶助コミュニティをつくり活動しています。「結」の活動は、空き家に住んでいるメンバーがお互いに空き家を直す手伝いや、畑をつくることなどです。残りの半分の時間では、ヨガの授業や僕のライフスタイルを体験できるイベントの開催、僕が得た考え方を対話や音声配信で発信しています。この起業スタイルでは、自分で生活基盤を安定させることができます。冒頭でお話しした建物の1階が安定するということです。1階が安定すると、自分の本当にやりたい事業の融通が利き「正直にできる」と思っています。この「正直にできる」ということが哲学を志す人にとって大切です。
茅葺き屋根の葺き替え
今後の予定についてお話しします。2024年5月に茅葺き屋根の葺き替えを行います。一般的に、茅葺き屋根の葺き替えには2,000万円かかると言われています。僕たちは低コストで実現していくため、茅場の確保や茅刈り、茅拵えを自分たちで行います。本来の茅葺き屋根とは、上手く機能すれば周辺地域だけで全ての材料を集めることができ、20年サイクルで茅葺きを土に還すことで良い畑の土を育てることができるものです。20世帯の集落の場合で例えてお話しします。元々の茅葺き屋根の仕組みは、毎年1家庭ずつ葺き替えを行うため、20年サイクルで回っていくものです。しかし、現在では茅葺きもなく、またそれを支えていた「結」というコミュティもなくなってしまっています。そこで僕は、大子町の中で放置されていたすすきが沢山生えている田んぼを訪ね歩き、刈り取る交渉をしました。その結果、大子町で10ヶ所の茅場を確保できています。
「哲学をするための古民家宿」
今日お話ししてきた取り組みは、僕なりの哲学です。哲学は生き方、考え方、働き方、物の見方をより愛に満ちたものへと更新していくものだと考えています。最近、古民家での体験を日常に持って帰ってもらえるような実践プログラムを提案する取り組みを始めました。来ていただいた方と話をしながら一緒に滞在プログラムをつくり、ヨガを含めた様々な形で実践できるように提案しています。体験で来ていただいた方からは「日常を見直すきっかけになった」という声がありました。また、古民家から帰った後も2週間に1回のペースでオンラインでヨガのレッスンを受けていただくという変化にも繋がっています。
これからも、県北地域のみなさんと良い関係をつくり続けながら、建物の1階が安定した「正直にできる」状態を伝え広げていきます。
県北BSS最終プレゼンテーション受賞者が登壇します!
県北地域のネットワークをさらに広げるためのイベント『県北BCPセミナー編vol.6「新規事業開発と新規起業が生み出す県北イノベーション」』にて、茨城県知事賞を受賞された松井さんと優秀賞を受賞された齋藤さんがピッチを行います。
キーノートでは株式会社imaの三浦 亜美さんをお招きし「新規事業開発や新規起業におけるコラボレーションの重要性」についてお話しいただきます。合同ピッチでは、県北BCPアイデアソン最終報告会受賞者と県北BSS最終プレゼンテーション受賞者からのピッチを実施し、県北地域でスタートした新しい取り組みについてお話しいただきます。イベントの最後には交流会を実施し、県北地域での広いつながりとコラボレーションを生み出す機会をつくります。
県北地域の活動に少しでも興味のある方は、新たなつながりとアイデアを求めて、ぜひご参加ください!
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